全学生に起業の挑戦促す専門職大学、理事長が考えるイノベーション人材育成の手だて

4月開設の「情報経営イノベーション専門職大学(iU)」の校舎(東京都墨田区=電子学園提供)

日本電子専門学校で電気・電子、情報通信技術(ICT)、デジタルコンテンツなど学生2800人以上を抱える電子学園。70年弱の伝統に東京都墨田区との協定を活用し、情報経営イノベーション専門職大学(=iU)を4月に開設する。「専門技術にビジネススキル、英語力で仕事の幅が広がることを経験上、感じていた」という電子学園の多(おおの)忠貴理事長に、イノベーション人材育成の手だてを聞いた。(聞き手・山本佳世子) ―知識と実践を両立させる、専門職大学にぴったりの教育理念をお持ちですね。 「変化を楽しみ、自ら学び、革新を創造する人材の育成を掲げている。そのために新大学ではICT、ビジネス、英語を柱とする。ICTは分野に横串を刺し、新たな価値を生み出す役割に変わっている。その知識を応用して商品やサービスを作り出し、グローバル社会で活躍する人材を後押しする」 ―4年間で600時間以上が必要な実習での特徴は。 「企業でのインターンシップ(就業体験)は3年次の5カ月を使い、前半はICTのシステム開発や保守に、後半は事業の創造や改善に取り組む。2年次までの学びでベースを作って集中的に実習を行う方が、分散実施よりも効果的だと判断した」 ―「全員が起業にチャレンジ」というメッセージを学生は受け止められるでしょうか。 「4年間を通じた独自のイノベーションプロジェクトの実習で可能にする。身近な課題の解決から、国連の持続可能な開発目標(SDGs)や地域活性化の取り組み、そして新事業と重ねていく。投資家や企業へのプレゼンテーションは全6回。優れたプランを後押しすべく、ベンチャーキャピタル(VC)も立ち上げた。1件50万円程度から、年400万円前後の出資にしたい」 ―墨田区との包括協定の中身は。 「墨田区は東京23区で唯一、大学がなく誘致していたため、区から土地を借りて自己資金で新大学の建物を整備した。18歳人口減ながら我々の専門学校の学生数はこの10年で最大で、全学科・教員を維持したまま新大学を置く。職人が強い同区でICT活用のモノづくりが進むよう、区内の中小企業のICT支援で協力する」 【略歴】おおの・ただたか 84年(昭59)日本電子専門学校芸術学部卒、同年放送技術社入社。87年NHKテクニカルサービス(現NHKテクノロジーズ)入社。06年電子学園入職。16年理事長。東京都出身、57歳。 【大学情報】▽設置者=電子学園▽所在地=東京都墨田区▽学部と入学定員=情報経営イノベーション学部(200人) 【記者の目/誰にも負けない思い】 3代目経営者の多理事長は、日本電子専門学校の卒業生11万人の1人でもある。腕に自信のある放送技術者だったが、海外撮影時のコミュニケーションや管理職でのビジネス知識で、不足を実感したという。時代の先端を行く中村伊知哉氏を学長に迎え、誰にも負けない思いで専門職大学での人材育成に乗り出す。 Q 専門学校と専修学校の定義は。 A 学校教育法では第一条で、小中高大などの学校を規定している。それ以外の教育施設で、授業時間や生徒数などの基準を満たして認可を受けた学校が「専修学校」だ。このうち中卒者対象の高等課程が高等専修学校で、高卒者対象の専門課程が「専門学校」だ。それに一般課程と全部で3種類ある。 Q 高卒者対象の専門学校と、大学の運営上の違いは。 A 専門学校は所轄官庁が都道府県で、知事の認可を受ける必要がある。大学は文部科学省で文科相の認可だ。また役割でいうと専門学校は教育のみ。対して大学は教育、研究と社会貢献だ。 Q 一条校化運動というのを聞いたが。 A 専修学校の経営側が法律上、第一条で規定される学校種に転換したいと願い、業界団体が10年ほど前から展開してきた運動だ。卒業生に学位を出す悲願が、専門職大学でかなった。通常の大学は学術を基盤に置いており元来、高度職業人養成の役割は不明確だ。そのため専門職大学の方が、産業社会に響く面がありそうだ。 出典:日刊工業新聞2020年3月5日 学校法人の電子学園は4月開設の「情報経営イノベーション専門職大学(iU)」向けに、100%子会社のベンチャーキャピタル(VC)を設立した。情報通信技術(ICT)を土台に、同大の全学生へ促す起業の挑戦を資金面から支える。長期実習の受け入れを行う約150社などとのネットワークを生かし、学生発ベンチャー(VB)の有望案件に共同出資する。通常の大学と異なり、全学生を刺激するVCという点で、注目を集めそうだ。 VCの「i」を2月、東京都新宿区に設立した。設立を計画するファンドは当初4年間、年300万―500万円を投資する規模。1事業当たりの出資は50万円からで計画する。 情報経営イノベーション専門職大学は各学年で新規事業立ち上げの実習を課す。1年次に身近な課題発見・解決の流れを体得。4年次の卒業課題は、本格的な新規性・社会ニーズを満たす新事業提案といった具合だ。 また学生はICTとビジネスで、3年次に計5カ月間のインターンシップ(就業体験)の実習を連携企業で行う。学生は新規事業のショートプレゼンを、これらを含む企業やVCに向けて4年間で6回、行う。 この中で有望な案件に対し、企業が新VCとの共同出資やビジネスのノウハウ提供で協力してくれることを狙う。「1期生は意識が高く、すでに入試の面接で起業プランの提示が出ている」(多(おおの)忠貴電子学園理事長)。 通常の大学は学術研究を基にしたVB創出の意識が強いが、専門職大学の特色に根ざしたVB輩出が、今回のVCで期待されそうだ。

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