公的機関の「金」購入が過去最高水準…経済不確実性高まる

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世界の中央銀行が高水準で金の購入を続けている。金の調査機関であるワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によれば、公的機関の2019年の金の純購入量は前年比1%減の約650トンとなり、ドル・金の兌換(だかん)制度が廃止された71年以降で最高となった18年と同水準だった。買い越しは10年連続。08年のリーマン・ショックなどを契機とする外貨準備のリスク分散の流れは、世界経済の不確実性の高まりを受けて20年代にも引き継がれようとしている。(取材=田中明夫) 希少価値が高く換金性に優れる金は、国の信用力に依存しないことから「無国籍通貨」とも呼ばれ、基軸通貨であるドルなどの代替資産としての性質も併せ持つ。中銀はかつて、金利のつかない金を売却し国債などで運用してきたが、10年の欧州債務危機では国の信用力も揺らぎ、以降は金を買い越している。 近年は、ドル以外の決済手段を広げるロシア、国際化を図る人民元の価値の裏付けを必要とする中国のほか、新興国の金購入が目立つ。WGCによれば19年はトルコが約159トン、ロシアが約158トン、中国が約96トン買い増したほか、ポーランド、カザフスタン、インドなど合計15の中銀が1トン以上買った。 WGCはリポートで「経済的・地政学的な不確実性の高まりが、特に新興国の金購入を推進する原動力となった」と分析している。 また、中銀の買い越し継続は「長期的に価格を支える材料にもなっている」(楽天証券の吉田哲コモディティアナリスト)との見方もある。金の需要は宝飾品が約5割、一般投資が約3割、中銀など公的機関が約15%を占め、中銀の購入が需給を引き締める影響は小さくないとみられる。 金の市場価格は、投資家の安全資産需要もあって09年から12年にかけて急伸し、中国経済の急成長などを背景とした銅や原油の価格上昇の伸び率を上回った。10年代も総じて底堅く推移して19年の平均価格は00年比で約5倍となり、銅の約3・3倍を超えるなど、金は21世紀に入ってより価値を高めた資産の一つと言える。 20年に入ってからも、金価格は19年の最高値圏を維持して推移している。年初の米イラン情勢の緊迫化に続き足元では中国の新型肺炎の感染拡大を受けて、「(経済への)警戒感があるほど高値で推移しやすい」(三菱UFJリサーチ&コンサルティングの芥田知至主任研究員)金の特性が出ている。 今後も国際的な保護主義の台頭や米中の覇権争いなどを受けて、世界経済の不安定な状況は中長期的に継続するとみられる。中銀や投資家の金へのリスクヘッジ需要は当面続くことになりそうだ。

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