ニュースイッチ

「第4の肉」はストレスでうまくなる?

「第4の肉」はストレスでうまくなる?

ベンチャーは突き詰めれば、売れるのか、作れるのか、の両方が求められると力を込める井出社長(右)

DAIZ Inc.(ダイズインク、熊本市中央区)は、大豆由来の機能性物質を使った植物肉を開発し、製造販売するバイオベンチャーだ。同じくバイオベンチャーのトランスジェニックやベビーリーフ栽培の果実堂(熊本県益城町)に続いて起業家の井出剛社長が2015年に創業。19年12月に大豆エナジーから社名変更した。

大豆などの植物性たんぱく質を肉状に加工した植物肉は第4の肉とも呼ばれ世界的ブーム。米国の植物肉ベンチャー、ビヨンド・ミートが19年5月に株式公開した際は株式時価総額が一時100億ドルに達したことも話題となった。世界人口の増加でタンパク源である牛や豚、鶏肉の生産や供給が追いつかなくなることが予想され、植物肉の必要性が叫ばれている。

ストレス加える

ダイズインクの植物肉開発で中核技術となるのは、落合式ハイプレッシャー法と呼ばれる加工法。落合孝次執行役員最高技術責任者(CTO)が開発した。発芽直後の大豆に酸欠や高温、菌添加などのさまざまなストレスをタイミングを計りながら加えることで大豆の栄養成分やうま味、機能性を飛躍的に向上させる技術だ。

この方法で作った発芽大豆を、プラスチックの押し出し成形に使う産業用機械で高温・高圧加工して、パフ状の発芽大豆植物用チップにする。このチップが植物肉の原材料となる。牛、豚、鶏など肉に似た食感や味、コクは、発芽大豆の加工の段階でアミノ酸のバランスを変えて再現する。

「後から味を加えるのではなく原材料の段階で大豆臭を取り除き、味や弾力と食感を近づけるというのが我々の立ち位置」(井出社長)とこだわる。

大量生産への道

発芽大豆とこれを原材料とする植物肉の開発では佐賀大や九州大、京都大との産学連携研究が進む。資金面ではQBキャピタル(福岡市早良区)と鹿児島銀行のかごしまバリューアップファンドの支援を受けている。現在、熊本テクノリサーチパーク(熊本県益城町)に試験工場を開設。独自開発の大豆発芽タンクで発芽大豆を製造している。課題は大量生産に向けた設備の構築と人材の育成だ。

井出社長は「まずは日本の食品メーカーや外食チェーンに使ってもらいたい」と自信を見せる。将来の海外への流通も視野にある。植物肉の売り上げ目標は3年後に40億円。20年春には発芽大豆を用いた植物肉ハンバーグの商品化を実現する計画だ。

日刊工業新聞1月16日

編集部のおすすめ