チョウザメ育つまで無収入を打破する「養殖+栽培」の仕組み

データドックのアクアポニックス(プラントフォーム提供)

フジキン(大阪市北区、野島新也社長、06・6372・7141)が、水耕栽培と水産養殖を掛け合わせた「アクアポニックス」の国内市場拡大を背景に、チョウザメ事業の顧客を増やし始めている。養殖はオスが食肉になるまで3年、メスが抱卵しキャビアが製品になるまで7―8年。養殖のみでは避けられなかった無収入、低収入期間のコストの一部を農業収入で補え、環境保護とコストの両立に一歩近づく。(取材=東大阪支局長・坂田弓子) フジキンは1992年に民間企業として国内初のチョウザメの人工ふ化に成功し、主力のバルブ事業の流体制御技術を強みに水槽での完全養殖体制を98年に構築した。現在、つくば先端事業所(茨城県つくば市)と茨城県内で複数保有する外部施設を合わせ2万匹を養殖し、稚魚を年間3万―4万匹出荷。加えてホテルやレストランなどへ食肉とキャビアを販売している。 チョウザメ天然資源は減少の一途をたどり98年にワシントン条約で絶滅危惧種に指定され、世界的に養殖が始まっている。フジキンは国連の持続可能な開発目標(SDGs)においても生物多様性維持で貢献できる事業として、チョウザメ事業を強化する方針。 課題だったのが収益化までの長さ。「キャビア販売が始まれば事業は一気に黒字転換するが、そこまで収入源がない」(平岡潔ライフサイエンス創造開発事業部特任主査)。新規参入できるのは強固な財務基盤を持つ企業や別事業で安定利益を確保している企業などに事実上限られていた。 現在、年間7―8件ペースで稚魚の新たな供給先が増えているが、アクアポニックス提案で新規顧客開拓のスピードを上げる。 アクアポニックスは魚の排せつ物をバクテリアで分解し、水耕栽培の液肥にする循環型有機農業。植物が濾過フィルターの役割を果たし水が浄化され魚の水槽へ戻る仕組みで生産性と環境配慮の両立につながる。 稚魚供給先のアクアポニックス初事例は17年。建設業のコスモ興業(茨城県河内町)がグループ会社のトキタ(同)でアクアポニックスを導入した。18年から野菜を地元スーパーや給食センターに納入。水道代や電気代などランニングコストの約半分程度を野菜収入で補っている。時田武コスモ興業社長は「柔らかく、完全無農薬ということで、スーパーでは出せば売れる状態」と語る。 ビッグデータ(大量データ)活用と寒冷地型データセンター運用を手がけるデータドック(新潟県長岡市)はデータセンター敷地内で19年8月に国内最大級のアクアポニックスを設置。9月からフジキンが稚魚を供給し始めた。冬季に貯蔵した雪氷によって冷媒を冷却する空調でエネルギーを抑制。溶けた水やIT機器排熱をアクアポニックスで活用する。 農作物栽培とチョウザメ養殖合わせ延べ床面積は約1000平方メートル。野菜を長岡市内のレストランなどに出荷を始めた。イチゴなど果実類の栽培も進めており、年3500万円程度の農作物収入を見込む。月10―20社が見学に訪れるという。データドック関連会社のプラントフォーム(同)でノウハウ提供からプラント設計まで一貫して手がけ、アクアポニックスシステムの外部への普及も進める。

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