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なぜ伊藤忠ロジが中国で存在感を増しているのか

なぜ伊藤忠ロジが中国で存在感を増しているのか

商社系物流の強みを生かした取り組みが続く

伊藤忠商事子会社の伊藤忠ロジスティクス(東京都港区)が中国で存在感を示している。中国で「独身の日」とされる11月11日には、EC(電子商取引)上で最大級のセールが行われ、1日で数兆円が動く一大イベントになっている。同社は約711万のオーダーに対応した。現地では在庫管理や配送、コールセンターを一貫して手がけるなど、商社系物流の強みを生かし、需要の取り込みを狙う。(取材・浅海宏規)

中国では、11月11日はシングルを意味する「1」が四つ並ぶことから「W11(ダブル・イレブン)」とも呼ばれる。当初は、主に独身者向けのセールとされていたが、家電や化粧品、消費財などがディスカウント価格で販売され、今や幅広い世代が利用する一大イベントになった。

伊藤忠ロジスティクスでも、オーダー数は2015年の約440万から16年に約460万、17年に約556万、18年には約665万へ拡大した。扱う点数も15年の約804万点から19年には約1472万点まで増えた。

「これまでのプロダクトアウトのビジネスではなく、消費者が何を求めているかを重視するマーケットインの発想を重視している」―。佐々和秀社長は物流ビジネスでの変化をこう説明する。

中国にある同社の物流拠点で「独身の日」に合わせて対応する社員は約1万人。このうち約9000人は派遣社員だ。現地で五つほどの派遣会社と契約を結び、臨時に採用して対応に当たっている。

扱うアイテムはスポーツ用品やアパレル、化粧品などと幅広く、日米欧の約20ブランドが中心だ。19年は11月11日の当日に約1万人、12日に約8000人、13日に6000人がそれぞれ対応し、6日ほどかけてオーダーを処理していった。「事前の訓練を含め、大変な作業だ。そこをしっかり対応することで、他社と差別化できる」(佐々社長)という。

同社の中国での物流事業展開は1990年代からと古く、現地での総倉庫面積は約80万平方メートルの規模を誇る。「商流機能と物流を一体的に進めることができる商社系物流ならではの強みを生かしたい」と佐々社長は意欲を見せる。

倉庫内でのピッキング作業の機械化や無線識別(RFID)タグの導入など、作業効率の向上も図りながら実績を積み重ねていく。

日刊工業新聞2019年12月26日

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