銀行は?保険は?証券は?競争激化の業界で頭一つ抜け出すのは誰だ!

三井住友銀行は住宅地のマンション1階に店舗を設置する

2020年の金融業界は、時代のニーズに即した取り組みによる顧客獲得競争が激しくなる。銀行業界は、日銀によるマイナス金利政策が続く中、フィンテック(金融とITの融合)技術を活用した顧客の利便性向上などを目指す動きが加速。証券業界は業種の垣根を越えた連携が相次ぎそうだ。一方、保険業界は人生100年時代などを見据えた事業展開、リース業界は航空機ビジネスが一段と活発になるだろう。激しい争いからアタマ一つ抜け出す企業はどこになるか―。各界の動向が注目される。 銀行業界では、日銀によるマイナス金利政策の継続を背景に、本業である融資のもうけに減少が見込まれ、経営を圧迫するとの予測が相次ぐ。ただ、各行いずれもこの状況に手をこまねいていたわけではない。業務を合理化・効率化したり、本業以外の収益を得たりするなどの取り組みが活発になっている。2020年はこうした対策が芽吹く1年になりそうだ。 三井住友銀行が進めている取り組みの一つに店舗改革がある。行員の事務のスペースを減らし、顧客が気軽に相談できる個室やブースを設けた。店舗を幹線道路に面した住宅地に置くなど立地も見直した。銀行は駅前に店舗を構えることが多いが、こうした変革で顧客を獲得する考えだ。 三菱UFJ銀、みずほ銀の両行はフィンテック技術の活用などが目立つ。三菱UFJ銀はリクルートと連携しスマートフォンを使った決済サービスの事業化を目指す。来店する顧客と時間と手間を省くことで、利便性を増し、顧客を囲い込む狙いだ。 みずほ銀はフィンテック活用で他行を先行している。同行が提供しているスマホ決済アプリ「Jコインペイ」は19年12月時点で、参加金融機関が91行で、19年度末時点での獲得加盟店数を15万店を見込む。このアプリはスマホ上で入金・送金ができるため、顧客の利便性はますます高まることになる。 各行いずれも顧客獲得の起爆剤となる効果が期待されているが、それが見えてくるのはこれから。収益悪化に歯止めがかからなければ、「格付けの引き下げを招き、外貨調達コストの上昇につながるなど負のスパイラルに陥る可能性も高まる」(三井住友銀行の高島誠頭取)との警戒感が依然ある。地銀も同様。島根銀行、福島銀行がSBIホールディングスと提携するなど、異業種との連携を模索する動きが広がっている。こうした動きは今後も活発になるだろう。 人生100年時代、生涯未婚率の上昇、一定の組織に属さないフリーランスの増加など社会変容の波が激しい中、個人のライフスタイルの複線化が見込まれる。保険業界はこうした動向に、柔軟に対応した商品開発が続きそうだ。 生保業界で今後も売れ筋と期待されるのが医療保険や介護保険などの第三分野商品。単身世帯の増加や少子化が進む背景から、死亡時より生存中のリスクを保障する商品ニーズは底堅く、時代を映す鏡となっている。 例えば、日本生命保険や第一生命保険などが提供する「就業不能保険」。病気やケガで長期間働けなくなるリスクに備えられる。20―30代の患者が多い所定の精神疾患も給付対象。業界が課題とする若年層からも評価がある。 人生100年時代に対応した商品開発も続く。明治安田生命保険は20年2月に認知症保険を販売予定。認知症や軽度認知障害(MCI)の早期発見につながるアプリケーションも併せて提供。シニア層や働く女性をキーワードにした商品・サービス開発のほか、保障から予防へのシフトが注目される。 損保業界は、例年通り自然災害対策が注目だ。18年に続いて19年も、台風など全国各地で大規模自然災害が多発。業界全体の保険金支払額は2年連続で1兆円規模となる見通し。年初予想の数値を上振れする結果が毎年続いている。 自然災害は業績に直結する。そこで各社は海外事業の比率を高める事業ポートフォリオの分散や事業ドメインの多角化で影響を軽微にする戦略を採用。東京海上ホールディングスは米保険大手ピュアグループの買収手続きを3月までに終える見通しで、今後もこうした事例が相次ぎそうだ。 大手証券とインターネット証券が競り合ってきた構図が変わる。小売業やカード会社など異業種の参入が増え第三勢力を形成しつつある。ポイントを利用した投資をはじめ、資産形成が必要な世代を取り込むサービスは多様化する見通しだ。約1800兆円を超える国内の個人金融資産をめぐって各社の戦略は新たな段階に入る。 証券業界への参入組で存在感をじわりと高めているのが丸井グループだ。子会社のtsumiki証券(東京都中野区)が、クレジットカード「エポスカード」で積み立て可能な投資信託を展開する。若年層の関心を集めるつみたてNISA(少額投資非課税制度)対象の投信で、同カード利用者の約7割を女性が占める。tsumiki証券の寒竹明日美最高経営責任者(CEO)は「エポスカードの機能の一つとして投信を提供する」と説明する。 クレディセゾンは「永久不滅ポイント」を利用できる証券サービスを始めたが、同社が組んだのがスマートプラス(東京都千代田区)。有価証券の売買執行機能を搭載する基盤(プラットフォーム)サービスを提供する。証券事業に必要なインフラを自力で構築するよりもコストを低減でき、参入障壁が大幅に下がる可能性がある。異業種が証券分野に入り込みやすい状況が整いつつある。 一方で、第三勢力の拡大に大手証券も対抗策を打ち出している。大和証券グループ本社はクレディセゾンと提携し、決済などの金融サービスの開発を目指す。野村ホールディングス(HD)は、LINEと設立した証券会社を通じて投資初心者の取り込みを急ぐ。大手とネット証券、参入組の三者が証券業界で陣取り合戦を繰り広げるのではなく、必要に応じて手を組む構図だ。それぞれの思惑が絡みながら、金融サービスの拡充が進みそうだ。 リース業界では2020年も航空機ビジネスをめぐる動きが活発になりそうだ。日本航空機開発協会は38年のジェット旅客機の運航機数が18年比1・69倍の4万301機に増加すると予測している。 日本のリース大手はこの成長市場を深耕すべく、海外航空機リース企業に出資してきた。東京センチュリーは19年12月、米アビエーションキャピタルグループを完全子会社化した。みずほリースは丸紅と共同で、6月までに米エアキャッスルを買収する。 国内勢では従来、オリックスの存在感も大きい。91年、アイルランドに航空機リース専門会社を設立。18年には同国アボロン・ホールディングスに30%を出資した。オリックスの北川慶理事航空事業グループ長は「我々はアボロンのスタッフを(以前から)ずっと良く知っており、(自社事業との)融合は全く問題なくできた」と胸を張る。今後の事業展開では「欧米を中心にしつつ、アジアの成長も取り込む」構えだ。 一方で北川理事は、「ここ数年内にはマーケットが悪化することもあるだろう」とみる。競争激化などで破綻するエアラインが出てきているといい、「そうなるとリースの飛行機が戻されてきて、リース会社の苦戦が始まる」。紛争や災害で旅客が急減するリスクも考えられる。 とはいえ、オリックスは破綻した航空会社から機体を引き上げた経験も「たくさんある。それが今につながっている」(北川理事)。機体の価値を判断する目利き力が磨かれれば、中古機を適正な価格で売買できる。 オリックスがそうだったように、航空機事業に挑む企業は大なり小なり試行錯誤が避けられない。多様な経験を将来の飛躍につなげられるかが注目だ。

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