技術開発の原動力に…トヨタのレースの生かし方

「もっといいクルマづくり」の基盤を構築

今年のWRCに参戦したトヨタの「ヤリスWRC」

 トヨタ自動車がモータースポーツ活動を通じた車両開発に力を入れている。自動車レースへの参画で得た知見を市販車に還元し、豊田章男社長が提唱する「もっといいクルマづくり」の基盤を構築しつつある。巨額な資金が必要なモータースポーツは単体での収益化は難しいのが実情。それでも、過酷なレースは人と車を鍛え上げる場として、人材育成や技術開発の原動力になっている。(取材=名古屋編集委員・長塚崇寛)  トヨタは2017年9月に市販車のスポーツカーブランド「GR」を立ち上げた。GRはGAZOO(ガズー)レーシングの略で、社内分社のガズーレーシングカンパニーが主導する。GRブランドを引き下げ、ラリーや24時間耐久レースなどに参戦。中でも市販車ベースのレースカーで一般道を走るラリーは、市販車開発に大きなフィードバックをもたらしている。  トヨタは17年、18年ぶりに世界ラリー選手権(WRC)に復帰した。小型車「ヤリス」をベースとした車両で参戦して、昨シーズンは王座を獲得。今シーズンも2位を確保していたが、最終戦の豪州ではコース周辺の山火事で中止が決定した。逆転優勝はかなわなかったものの、今期も安定した強さを発揮した。  ガズーレーシングカンパニーを所管する友山茂樹副社長はWRCの参加に伴い、「特に(本場の)欧州でヤリスの(販売)シェアが上がっている」と分析。WRCは世界各地で年間14戦を行うが、「ラリーの開催国でシェアの上がり方は顕著だ」と強調する。市販車でレースを走ることによるマーケティング効果を実感している。  レースから得られるデータも大きなメリットだ。友山副社長は「一般道を信じられない速度かつ安全に走ることから得られるデータは、テストコースのものよりはるかに貴重だ」と指摘。ラリーカーはレース中、車の挙動や運転者の操作、エンジンの回転数やサスペンションの動きといったデータを常時収集している。  これらのデータを人工知能(AI)に学習させれば運転者の意思を推測しながら、安全に操作する制御システムの開発などにつながる。友山副社長は「レースで得た知見が、自動運転時代に大きな競争力を生み出す」と力を込める。  WRCは20年11月、約10年ぶりに日本で開催される。愛知県と岐阜県の8市町をコースとするため、トヨタにとってホームゲームとなる。「日本のメーカーが世界最高峰のラリーを戦う姿を身近に感じてもらえる」と友山副社長。車の楽しさを訴求し、ファンのすそ野を広げる絶好の機会になりそうだ。

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