ロボコンをゲームデザインで“再発明”、中国DJIの創意工夫に驚き

【連載】中国ロボコンの巨大エコシステム #2

決勝・上海交通大学vs東北大学。空中戦を制し東北大が優勝した

 ロボットコンテストをエンターテインメントとして成立させるにはゲームデザインが重要になる。一般のゲームでは三すくみ構造やジレンマを配置する。火・水・草などの属性設定が三すくみの典型だ。勝ちパターンが固定化しないようにプレーヤー同士が拮抗(きっこう)する仕組みを作り込む。するとプレーヤーが戦略を練り、チームに個性が生まれる。中国DJIが主催したロボコン「ロボマスター」では機体の体力やダメージ計算などを導入してゲームバランスを調整している。(取材・小寺貴之)  ロボマスターでは互いに接近した肉弾戦や長距離での狙撃戦、飛行ロボット(ドローン)による空中戦など、多彩な対戦シーンが繰り広げられた。それぞれ、数の多い歩兵ロボや、大口径弾を撃てる英雄ロボ、上空から攻撃できるドローンが活躍した。2018年大会までの必勝パターンは英雄ロボと、それを支える歩兵ロボや工兵ロボの強化だった。英雄ロボの大口径弾は他のロボの攻撃の10倍のダメージが計上されるためだ。  大口径弾の弾倉はフィールド中央に配置され、競技開始と同時に工兵ロボによる弾倉の奪い合いになる。弾倉の数は限られるため、工兵ロボの速度と弾倉回収の精度が勝敗に直結した。日本から参加したフクオカニワカチームの花守拓樹リーダーは「セオリー通り英雄ロボを中心に開発した」と振り返る。  特に英雄ロボの長距離砲は有効だった。19年大会3位の電子科技大学は自陣深くから直接相手の基地をたたいた。長距離砲は攻撃機の位置がわからない。フィールドを探して英雄ロボの位置がわかっても、それを守る歩兵ロボがついている。長距離砲を止めるには、探索し、数を集めて止めに行く必要がある。その台数だけ守りが薄くなるジレンマがある。長距離砲で決めきれなければ歩兵ロボを交えた肉弾戦になる。各チームは開発体制も機体性能にも制約があり、戦略が試された。  だが優勝したのは空中戦に秀でた東北大学だった。フィールドの起伏は地上ロボの射線を遮るには十分な高さがあるが上空からの攻撃には無防備になる。ドローンの攻撃は地上のロボには防げない。だが空中での射撃は安定しない。射撃の反力で機体の姿勢がふらつくためだ。  東北大はドローンの射撃精度を高め、相手の基地の体力を削りきった。相手は防げないためゲームを支配できた。東北大の王法祺リーダーは「空中戦で試合を制するには8割近い命中率が必要。練習に練習を重ねた」と振り返る。他のチームの命中率は数%から十数%だった。DJIの包玉奇技術責任者は「いずれのチームも技術には差がない。東北大は射撃精度の違いだけでゲームの戦略を大きく変えた」と評価する。  通常のeスポーツなどではプロゲーマーが三すくみ構造などのゲームバランスの盲点を探して、それを起点に必勝パターンを作ることがある。これは人の作った仕組みの穴探しに近い。ロボマスは開発した技術でゲームバランスを崩し、自らゲームを支配できる。(全6回)

続きを読む

関連する記事はこちら

特集