やっぱり若者は東京へ。日本の人口政策が大失敗している論理矛盾

破たんした地方創生施策、「自治体」存続より大事な個人からの目線

 地方都市から東京圏への流入に歯止めがかからない。安倍政権が2014年に「消滅可能性都市」というセンセーショナルな未来を発信し、その対策として地方創生施策を掲げた。施策の狙いは出生率の低い東京に若者が集まるのを防ぎ、比較的出生率の高い地方に若者をとどめることで日本全体の人口減少を緩和しようというものだ。  2020年までに東京圏への転入と転出を同じにすることを目標としたが、その差は縮まるどころか年々拡大している。目標達成は事実上不可能な状況で、政府が6月に示した20年度から5年間の地方創生施策案では「定住人口」ではなく、兼業や副業などで地域を関わる「関係人口」を増やす方向に切り替えざるを得なくなった。  私が住む宮崎県も2018年の転出超過数は3,087人となっており、前年に比べて265人も増加した。転出入のほとんどは30代以下の若者で、その世代の県内人口は年々減少しているにも関わらず転出超過数が増えたということは、人口割合だとより高くなっているだろう。  政府も自治体も人口流出の抑制と移住促進を同時並行で進めることで、なんとか転出超過に歯止めをかけようとしているが、目的と手段が入れ替わる、いわゆる「手段の目的化」がみられる。  国家や自治体は国民の生活を守り、幸福を求める手助けをするために作られた”仕組み”である。74年前の第二次世界大戦では、「国を守る」という大義の元、国民(その多くが若者)の方が犠牲になった。  地方創生の議論においても、自治体が消滅するというフレーズで全国の自治体を煽り、補助金をぶら下げ人口減少対策に注力させている。その前提に「自治体や議会などの組織を維持するために住民がいる」という意識が働いている。  補助金をとった企業は決められた施策を報告書にしやすい形で実行し、表面的に消化されていく。それを5年間繰り返した結果が、若者人口が減っているにもかかわらず、東京圏への一極集中が加速しているという目も当てられない現実だ。  地方創生がうまくいかない理由には「中央集権的な体制」や「移住者を奪い合うゼロサム要素」など挙げればがきりがない。しかし根本的な原因は「自治体を消滅させないために定住者を増やす」という論理矛盾にある。  定住者の生活水準を向上させるために存在する自治体であれば、定住者がいなくなれば自治体もなくなるのが普通である。それを自治体という組織を守るために定住者を確保しようとするから違和感が生まれる。  体制を維持するために個人が犠牲になる社会は健全ではない。地元の高校生や大学生に対するアンケートでよくあること。大人たちがチェックつけてほしいとわかっているから「地元就職も検討している」に丸をつけるが、実際には本当にやりたい仕事や住みたい場所を優先して都会に出ていく。  国家や自治体・地域を維持するために個人のキャリアを犠牲にしてはいけない。本当に東京一極集中を防ぎ、地方の定住者を増やそうとするのであれば、自治体も地域も徹底的に個人のキャリアに寄り添わなければならない。  市民に「よそに出ていかないで」とお願いするのではなく、妥協しないキャリア選択をしたうえでも選ばれる自治体になることだ。移住者には「うちの街に来て何をしてくれるのか?」と問うのではなく、来てくれた移住者が持っているポテンシャルを発揮させてあげられるようにサポートできる自治体・地域になることである。  自治体・地域の目線で施策を行うのではなく、今いる市民、移住検討者の目線から施策を作るには、これまでの中央集権的な補助金パッケージモデルでは決してうまくいかない。  5年間、血税をつぎ込みつつ失敗に終わった地方創生を検証するタイミングだからこそ、施策の内容以前に「目線とスタンス」を見直すことが大切なのではないだろうか。 (文=田鹿倫基<日南市マーケティング専門官>) <関連記事>

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