リチウムを超える!全固体電池の展望とは

おすすめ本の本文抜粋「全固体電池入門」

 現在、全固体電池の用途として最も注目されているものが電気自動車をはじめとする車載用途である。車載用途においても大型化が引き起こすリチウムイオン電池の課題を解決しなければならないことは当然であるが、それに加えて車載用途では自動車内部の限られた空間に電池を搭載する必要があり、体積当たりのエネルギー密度が特に重要視される。全固体化は、安全装置の簡素化やバイポーラ構造 (注) の採用を可能とし、体積エネルギー密度の向上に資するものであるが、それに加えて車載用電池において大きな体積を占めるものが電池パックとしたときの冷却機構である。 (注)バイポーラ構造:集電体の両面に正極材と負極材を形成したバイポーラ電極と固体電解質層を交互に積層した構造  電池として機能する最小単位をセル、複数のセルを接続してケースに収めたものをモジュール、複数個のモジュールとセンサやコントローラを収め、自動車に搭載される最終形態をパックと呼ぶ。電池の全固体化は、セル、モジュールレベルでのエネルギー密度を向上させるものであるが、安全性や寿命を担保するために温度上昇を抑制する必要が高いリチウムイオン電池は、電池モジュール間に冷却のために空気の流路を確保する必要がある。この流路自体は空洞であり、重量はゼロと考えてもよいものであるが、その体積は電池パックの体積エネルギー密度を大きく低下させる。固体電解質を使用した全固体化が電池の耐熱性を向上させるものであるならば、この流路が占める体積を大幅に低減することができ、電池パックのエネルギー密度を向上させることができる。  低炭素社会実現に向けた蓄電池の重要性は、車載用電池にとどまらない。図には、クリーンエネルギーの利用を促進し、さらにエネルギーの高効率利用を可能とするスマートグリッドの概念図を示した。クリーンではあるものの、時間的変動が大きく、計画的な発電が困難な太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを大量に電力系統に連系するためには、これら発電方式における時間的変動を抑え、電力の供給と需要をバランスするための蓄電池の存在が不可欠であることは言うまでもない。このような定置用の蓄電池の存在は、さらに火力、水力、原子力などの他の発電方式を含めた、各発電方式の特徴を生かしたベストミックスの達成に貢献するものでもある。  このような用途で使用される定置型の蓄電池には、車載用途で求められるほどの高い体積エネルギー密度は必要とされないであろうが、建屋の上階に設置する際の蓄電池重量にある程度の制約が生まれる。さらにリチウムイオン電池に使用されている有機溶媒電解質は消防法上、第四類(引火性液体)第二石油類に指定されている。安全機構を幾重にも組み込むことで電池の安全性は確保できるかもしれないが、それ以前に、指定数量以上の貯蔵や取扱いは、危険物の規制に関する法令で定める技術基準に適合した施設でしか行うことができない。そのため、建屋内に多数の蓄電池を設置するには限界があり、不燃性電解質の採用はこのような障害を取り除くものでもある。このように、全固体電池は低炭素社会実現に向けて拡大する大型電池の需要にこたえるものとして期待されているものであるが、来るべきSociety 5.0 では逆に超小型電源としての需要も開けそうである。 書籍紹介 全固体電池入門 高田和典 編著、菅野了次・鈴木耕太 著、A5判、168ページ、税込み2,160円 全固体電池はリチウムイオン電池よりも安全、長寿命、高性能と言われ、期待を集めています。実現に向けてどういった技術が開発されたのか、現在はどのような状況にあるのか、長年にわたり最前線で研究を進めてきた著者達が解説します。 著者紹介 高田和典 1986年大阪大学博士前期課程修了、同年三重大学工学部資源化学科助手 1986年松下電器産業 1991年大阪市立大学 博士(工学) 1999年無機材質研究所 2001年物質・材料研究機構 2018年同エネルギー・環境材料研究拠点拠点長 菅野了次 1980年大阪大学修士課程修了、同年三重大学工学部資源化学科助手 1985年大阪大学 理学博士 1989年神戸大学 助教授 2001年東京工業大学教授 鈴木耕太 2010年東京工業大学修士課程修了 2010年日本学術振興会特別研究員(DC1) 2013年東京工業大学博士課程修了 博士(理学) 2013年東京工業大学助教 2017年JSTさきがけ研究員(兼任) 販売サイトへ 目次 (一部抜粋) 第1章:なぜ全固体電池か 蓄電池を取り巻く現状 リチウムイオン電池の課題と全固体電池の特徴 第2章:全固体電池開発の歴史 固体中におけるイオン伝導の発見 全固体電池の誕生 第3章:固体電解質の種類 銅イオン、銀イオン伝導性固体電解質 アルカリイオン伝導性固体電解質とその応用 リチウムイオン伝導性固体電解質 第4章:全固体電池の現状 バルク型電池 薄膜電池 第5章:全固体電池材料の評価法 材料合成 X線回折法 熱分析 Raman分光法 交流インピーダンス法 サイクリックボルタンメトリー 充放電試験 全固体電池内部の解析 第6章:全固体電池の展望 ↓画像をクリックしてamazonへ↓

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