なぜ、青山ブックセンター本店が「出版」を始めるのか?店長 山下優さんに聞いた

 東京都渋谷区の書店「青山ブックセンター本店」が店舗の取り組みの一環として出版事業を始める。そこで店長の山下優さんに、出版を始めることにした背景や具体的な構想を聞いた。  そもそも書籍は、非常に大雑把に言えば、「出版社」がつくり、「取次」が流通させ、「書店」が売るという流れで読者に届く。だから普通、書店は出版をしない。  ところで、昨年9月に公開した山下さんのインタビューは多くの人に読まれた。「店づくり」に焦点を当て、不況が続く出版業界の課題や光を浮き彫りにした()。  今回は「出版」をテーマに、書店が置かれた厳しい状況へのチャレンジを伝えたい。ちなみに書籍第1弾の発売日は今年の7月7日を予定している。[聞き手と写真・平川透]  —今年1月12日のご本人のSNS投稿の中に、「今年、青山ブックセンターは出版社になります。」とあります。なぜ出版を始めるのですか?  1冊売れた時の粗利が大きいなど実利の面ももちろんありますが、今、書店で重要なことは、お店や書店員がどういう人や事柄に注目しているのかを伝えていくことです。その一環として出版をすることで、著者と読者の距離を縮め、より多くの「人と本の化学反応」を起こせると考えています。  今の書店は受身すぎるのではないかと。出版業界のみならず、世の中が大きく変わっているのに、現場の売り方は変わっていないからこそ、書店は苦しいままです。  —働き手の確保も難しいそうですね。  そんな書店というものに、あまりにも希望が見えないのではないでしょうか。「儲からない」「稼げない」といった理由はもちろんのこと、「チャレンジしていることを見せられていない」ことも、若い人たちが入りたがらない業界になった理由だと思います。  もちろん出版が簡単ではないことは重々承知していますが、チャレンジし、希望を持てるようになることが必要だと考えています。  —どのような出版をするのですか?  初版の規模感としては、1,000部の刊行を予定しています(*)。例えばその内の500部は店頭で売って、残りの500部は開設予定のECサイトで販売する予定です。著者が店舗を持っている場合などは、そこでも販売して頂きます。  —基本的には青山ブックセンターでしか手に入らない本をつくるのですか?  重版以降は、卸すことも考えていますが、ISBNコードは取得しない予定ですし、広く一般流通させるための出版は、当店がやる必要はないのではと(*)。薄く広くというより、高い熱量と濃さを持って、しっかり読者に届けたいです。 —どのような本を出すのですか?  今のところジャンルは決めずに、いろいろなものを出したいなと考えています。第1弾として、の木村昌史さんにご執筆を快諾して頂きました。7月7日発売予定で進めています。  —編集者など出版に関わる人集めはどうするのですか?  当店のみで全てを完結できるとは思っていないので、いろいろな方に協力してもらいながら進めます。  当店が様々な形で出版活動の場を提供するようなやり方も可能ですし、いろいろな可能性を感じています。  —最後に、の反響について教えてください。記事には多くの人が反応し、山下さんのお名前がTwitterの「おすすめトレンド」に入りました。  普段からお世話になっている方々、出版社や書店、各業界の著名人など、本当に幅広い分野の方々が取り上げてくださり、感謝してもしきれません。  記事の公開後にお会いした著者から「書店員がどのようなことを考えているのかを知れてよかった」と直接、感想を頂けたことも嬉しかったです。  単に記事が拡散されただけではなく、公開後のひと月、特に土日は来店客数が増え、売り上げがものすごく伸びました。  書店員が、顔と名前を出して、どういうことを考えているのか発言したことが大きかったのかなと思います。(終) 青山ブックセンター本店(東京都渋谷区神宮前5-53-67 コスモス青山B2F) 著者を招いて、刊行を記念したトークイベントを随時開催。 → 毎週土曜日、1冊の本を紹介しつつ、あーだこーだ話す動画番組を開始。 → 青山ブックセンターはブックオフコーポレーションが運営する新刊を扱う書店。 【略歴】やました・ゆう( Twitter ) 1986年、東京生まれ、横浜育ち。本屋で働く9年前はクラフトビアバーで働いていた。毎週レコードを買い、ビールを中心にお酒全般を愛でる。おすすめの本は、北村道子さん『衣裳術 2』(リトル・モア)、上妻世海さん『制作へ』(オーバーキャスト)、森田真生さん『数学する身体』(新潮社)、小倉ヒラクさん『発酵文化人類学』(木楽舎) 、木下古栗さん『人間界の諸相』(集英社)。

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