ロボカップ2017、日本勢は大活躍!すでに来年を目指した戦い始まる
インダストリアル
インダストリアルではロジスティクス部門は独アーヘン工科大が断トツで優勝した。2位の倍の得点をあげた。この部門では工場の生産機械(FA)の間をロボットが行き来し工程をつないでいく。製品を完成させて最後の配送センターに納められたのはアーヘン工科大だけだった。運営に当たった龍谷大学の植村渉講師は「ドイツ一強。インダストリー4.0の流れを受けてドイツ産業界も支援している」と説明する。「日本ではインダストリーロジスティクスはもっと注目されるべき。まだチーム数が少なく、アーヘン工科大以外は技術が成熟していない。いま参入すればチャンスは大きい」と新規参入を求む。
レスキュー
レスキューでは京都大学が総合4位に入り、小型機クラスと器用さクラスで表彰された。ベスト4のうち3機は重量級で、巨体を生かしてコースを走り回っていた。京大は走行性よりも小型と器用さを重視した。竹森達也修士2年生は「他は重量級のなか違うコンセプトのロボットでもしっかり戦えたことは良かった」と振り返る。障害物の走行中に転倒したがアームを使って起き上がりコースに復帰した。災害現場では人間がロボットを救助できないためロボットが自力で立ち直れる機能は重要だ。
海外勢も見所の多い大会だった。レスキューで優勝したイランの「YRA」は、「カネがなくても勝てることを証明した」と、運営に当たった長岡技術科学大学の木村哲也准教授は評価する。走破性や器用さ、操作性など総合力で上回った。イランは部品の入手にも苦労する国だ。資金繰りも苦しく、家電や自動車の部品をロボットに転用してコストを抑えている。自動車用モーターを改良して熱暴走を抑え、120kgの巨体を縦横無尽に走らせていた。ジャンク品でロボットの信頼性を高めるのはとても大変だ。製品の仕様を守ればいいわけでなく、性能限界はどこか、どうしたら限界がのびるのか試行錯誤を重ねるしかない。成功も失敗も先輩が後輩にしっかりと引き継ぎ、ノウハウを伝えていかないとどこかで雲散霧消してしまう。YRAはそれをやり続け重量級のロボットとして仕上げてきた。
YRAや九工大の活躍は他の大学を奮起させるだろう。一流の大学でなくても、資金がなくても良いロボットは作れる。限られた条件の中で知恵を出し、チームとして協力して、成果やノウハウはしっかりと後輩に伝えていく。ロボットはさまざまな技術をインテグレーションする研究分野だ。これができる技術者はどんな会社に行っても活躍する。大学研究者として学生を抱えるようになってもいいチームを作れるだろう。
日刊工業新聞電子版2017年7月31日