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研究とイノベーションにどんな男女差があるのか

「ジェンダーサミット」日本で初開催。日本社会こそ異質な人材を
研究とイノベーションにどんな男女差があるのか

議論する(左から)キャンベル編集長と浅川IBMフェロー、浜口道成JST理事長

 研究とイノベーションにおける男女差に注目する「ジェンダーサミット」が日本で初開催された。英科学誌ネイチャーにおける論文投稿者・査読者の性別対応や、フィリピン政府のジェンダー予算に注目が集まった。視覚障がいを生かしたイノベーションで知られる浅川智恵子IBMフェローは、「ダイバーシティーを体現する側から声を上げよう」と呼びかけた。

ネイチャーの査読者は多くが男性


 科学技術振興機構(JST)などの主催で5月末に都内で開かれた。ネイチャーでは編集者の多くが博士号取得者であり、女性が過半となっている。しかし投稿論文の採択を精査する査読者は、実績あるベテラン研究者であり、多くが男性だ。

 ネイチャーのフィリップ・キャンベル編集長は、常に「これをできる女性はいないのか」と検討。その結果、査読者における女性比率は現在、20%半ばで「2012年と比べ倍増した」と講演した。ただ査読依頼を断るケースが女性は男性より多いという。

 また、恣意(しい)的な判断を防ぐため、著者の性別と名前を伏せた査読を、総説論文で導入していることを明らかにした。

 政府の取り組みではフィリピン科学技術省のロウェナ・ゲバラ次官の報告が注目を集めた。80年代のアキノ、09年に各省ジェンダー予算を法制化したアロヨの両女性大統領の活躍が大きい。

 工学や農業は今も男性が多いが、医療やビジネスで女性が多い状況だ。そのため同国の「直近6年間の平均年収は女性が男性を上回る」。研究開発リーダーは男女ほぼ同数だという。

マイノリティーの利用者の声、開発に恩恵


 世界初のウェブサイト読み上げソフトを開発した浅川フェローは、自動運転車の技術が障がい者、高齢者、若年者の運転支援をし、一般の事故も低減させる事例に注目した。「(マイノリティーの)利用者の声を受けた開発が、すべての人に恩恵をもたらす」と指摘した。

 また、プロジェクトリーダーを務める米カーネギーメロン大学では、コンピューターサイエンスの学部で学生の女性比率は半数弱、外国人比率が7割だと紹介。「控えめでグローバル競争に弱い日本社会こそ、異質な人材を集めて変わる意識が必要ではないか」とコメントした。
(文=山本佳世子)
日刊工業新聞2017年6月5日
日刊工業新聞記者
日刊工業新聞記者
国連は持続的な開発目標(SDGs)の一つにジェンダー平等を挙げている。サミットは最後に「科学技術イノベーションとともに歩むジェンダー平等」が、SDGsの全17項目の推進を促すとする「東京宣言」を発表した。 (日刊工業新聞科学技術部・山本佳世子)

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