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データが明らかにした「のどごし」の弱点。キリンは新商品で30代に狙いを定めた

昨年は大幅減、ライバルに比べ50代以上の愛好者が多く需要先細りの懸念
データが明らかにした「のどごし」の弱点。キリンは新商品で30代に狙いを定めた

スペシャルタイムをPRする布施孝之社長と女優の波瑠さん

 キリンビールは第三のビール「キリンのどごし」シリーズから、18日に戦略新商品「キリンのどごし スペシャルタイム」を発売した。麦100%の味覚にこだわった商品で、価格は通常商品と同じ。期間限定商品ではなく通年商品として発売する。商品開発には味覚はもちろん、ネーミングやパッケージデザインに至るまで、緻密なデータ分析を実施している。

 「のどごしは当社にとって、第三のビールの主力ブランド。負けるわけにはいかない」。開発に携わった商品開発研究所新商品開発グループの鈴木伸氏は強調する。

 のどごしの基本アイテム「のどごし(生)」は2005年に発売、第三のビールブランドでは現在も売り上げ1位を誇る。ただ、16年の販売数量は前年比7・1%減の4320万ケース(1ケースは大瓶20本換算)と大幅に減少。第三のビール市場全体の縮小に加え、ライバル商品攻勢の影響を受けたためだ。

 ライバル商品に対抗商品を出すには、双方の強み・弱み分析が欠かせない。その作業の基礎になるのが、消費者調査で得た“各種のデータ”だ。

 消費者調査はまず、「なぜ第三のビール市場が伸び悩んだのか」という、第三のビール市場全体の不振分析から始めた。第三のビールに消費者が期待する要素、それへの満足度などを一つひとつの回答結果で分析。
                

 期待する要素の1位は「ビールのようなおいしさ」で、6割の消費者が回答している。しかし、この期待に対し「満足」と答えているのは1割にとどまる。2位の「気軽に飲める」も5割に対し3割、「飲みやすい味」も5割に対し2割5分にとどまった。味の要求水準に対し満足度が低い状態が浮き彫りになった。

 もう一つは自社「のどごし」の分析。ライバル商品に比べ50代以上の愛好者が多く、30代が少ない。これでは高齢化で、需要が先細るおそれがある。「従来ユーザーを大事にしながらも、新しいユーザーを獲得しなければという思いが強かった」(鈴木氏)。

 30代を対象にした調査で仕事だけでなく日常生活やプライベートを大切にすること、カネや時間がないと感じていることがわかった。ライバル社の商品はコクやプレミアム感を押し出しており、少量をじっくり味わうイメージが強い。「少量消費だと販売数量を伸ばせないので味わいを重視しつつも、楽しい雰囲気でゴクゴク飲める酒を目指した」(同)という。

 消費者調査の事前評価は高く、売れ行きに自信を持つ。「醸造チームと味はもちろんのこと、パッケージや缶の色、字体なども徹底的に議論した。調査自体はデータ収集だが、どうやって集めるか、データをどう分析するかは熟練者でないとできない作業」(同)という。
(文=嶋田歩)
日刊工業新聞2017年4月17日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
ごく普通の市場調査にも感じるが、各種データのどれにプライオリティーを置くかは、最後は商品開発責任者のセンスによる。味は飲んでみないと分からないが、まず波瑠さんを起用したのは好印象。

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