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「47都道府県の一番搾り」が当初目標より2倍も売れてるワケ

キリン社員と地域消費者が共同で商品づくり
「47都道府県の一番搾り」が当初目標より2倍も売れてるワケ

出荷量で全国4位の埼玉県の上田知事(中央)とキリンの布施社長(左)

 キリンビールは全国の都道府県ごとに味や個性を変えて発売している「47都道府県の一番搾り」の年間販売目標を、200万ケース(1ケースは大瓶20本換算)から260万ケースに上方修正した。200万ケースの目標は、7月に120万ケースから上方修正した。今回はそれに続く再度の上方修正となり、当初目標と比較すると約2・2倍になる。

 都道府県別ビールの切り口に加え、地域特性に合わせた営業やプロモーションの態勢を構築したこと、国内9工場の設備の効率的活用で商品供給体制を迅速に整えられたことなどを理由としている。12日から、これまで未発売の栃木、群馬、富山、石川、奈良、福井、和歌山、佐賀、沖縄県の一番搾りを発売。熊本県の一番搾り「熊本づくり」も震災復興支援で全国展開する。

 2015年も9工場限定の一番搾りビールを発売したが、工場発であるため名称は「取手づくり」「横浜づくり」など、工場立地県に限られていた。今回は47都道府県とした分、キリンビールの工場がない長崎や鳥取、徳島、青森、埼玉、広島などの県でも発売できる。

 これらの県では、県名が商品名についているため「地元の居酒屋や料理店で、客寄せのため、ぜひとも店に置きたいと要望が多い」(布施孝之社長)と語る。県名が入ったビールに地元料理を合わせて、提案しようとの思惑だ。

 もっとも、単に県名が入っただけの商品ならば他にもある。キリンビールの一番搾りの場合、商品の味覚設計からコンセプトづくり、飲み方提案まで、同社社員と地域消費者が徹底して共同で関わっている点が特徴だ。

 例えば広島づくりは広島カープの象徴である赤色を目指し、焙煎(ばいせん)麦芽などで褐色に近い液色にする。山形づくりは紅花色の液色にこだわり、低温麦汁濾過製法と県産ホップを使用するという具合だ。埼玉づくりは麦作の盛んな地域を象徴するため麦を多めに使用してモルト感を出し、缶はすでにほぼ完売したという。

 ビール消費者に「キリンが考える、当県の味はこれだ」とお仕着せの商品を販売するのではなく、最初から開発に参加してもらうことで商品愛着を高める。

 47都道府県ビールの発売で、一番搾りを扱う料飲店はこれまでに1万店以上、増えた。他社ビールを扱う料飲店の攻略には通常、多大の営業努力と年月、資金を必要とする。ビールを置いてもらうため同一店舗に長らく通い詰める営業マンの苦労を考えれば、キリンビールは新規開拓訪問で有力なツールを手に入れたことになる。
日刊工業新聞2016年8月16日/10月12日の記事を加筆・修正
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役ブランドコミュニケーション担当
日刊工業新聞でも各支社や支局発で結構、「47都道府県の一番搾り」の記事が取り上げられています。メディア戦略でもなかなか良い商材なのかも。

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