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お酒の強い人、弱い人、疾患発症の違いが明らかに。胃がんと痛風はどっち?

研究成果相次ぐ。予測・治療法の糸口に
暑くなりビールがおいしい季節になってきた。お酒に含まれるアルコールと人体にはどのような関連があるのか。アルコールの分解に関わる遺伝子が、中性脂肪の蓄積やがんの発生に関わるといった研究成果が相次いで報告されている。

 いわゆる“酒の強さ”とは何か。体内に入ったアルコールは、分解される過程で二日酔いの原因となる有害物質「アセトアルデヒド」に変わる。その後「2型アルデヒド脱水素酵素(ALDH2)」と呼ばれる酵素がアセトアルデヒドを分解し、無害な酢酸に変える。ALDH2の働きの強さが酒の強さの一因となっている。

 「飲酒習慣の有無にかかわらず遺伝的に酒に弱い人は肝臓に中性脂肪がたまりやすい」との研究成果を熊本大学の研究チームが5月に報告した。鬼木健太郎助教と猿渡淳二准教授らは、人間ドック受診者の調査で、食べ過ぎや運動不足が原因となり肝臓に中性脂肪がたまる「非アルコール性脂肪性肝疾患」の罹患(りかん)率をALDH2に着目し解析。遺伝的に酒に弱い人は強い人に比べて罹患率が2倍高くなることを明らかにした。

 またアルコールの摂取により胃液中で発生したアセトアルデヒドが胃がんのリスクを高めることが知られている。酒に弱い人はALDH2が働かず、飲酒後に胃のアセトアルデヒドの濃度が上昇するため、胃がんのリスクがますます高くなる。

 こうした発がんリスクの低減について、東北大学の研究チームが研究成果を発表。アルコールが原因で起きる胃がんのリスクをアミノ酸の一種「L―システイン」の投与で減らせることを突き止めた。アルコールの分解によって発生するアセトアルデヒドにL―システインが結合して無毒化し、胃がんの発生を抑えることが分かった。

 一方、酒が強いことでかかりやすい疾患も明らかになってきた。防衛医科大学校の研究チームは、ALDH2を作る遺伝子の個人差が痛風の発症に関わっていることを発見した。痛風患者と痛風でない人の遺伝子を解析した結果、ALDH2の活性が高く遺伝的に酒に強い人は、同活性が低く酒に弱い人に比べ痛風の発症リスクが2・3倍高くなることが分かった。

 これらの成果によって今後、疾患の発症予測や治療法の開発などにつながることが期待される。もっとも、酒の強さに関わらず飲み過ぎが体に悪いことには変わらない。適量を守ってアルコールとつきあっていくことが大切だろう。
日刊工業新聞2016年5月31日
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
自分は明らかに弱い方の人間。「L―システイン」、覚えておこう。

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