「国家安全保障関係予算の未曽有レベルでの導入」焦点に…第7期科技イノベ基本計画、策定始動
大学、研究成果保護課題に
内閣府総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)で2026年度から5年間の第7期科学技術・イノベーション基本計画の策定が始まった。研究力基盤の強化やスタートアップの創出などが論点に挙がっている。焦点の一つは国家安全保障関係予算の未曽有のレベルでの導入だ。大学は研究セキュリティーの体制整備が求められる。(小寺貴之)
「第6期基本計画では多くの政治家の先生方の多大なる尽力を得て、10兆円大学ファンドに代表されるように、国の科学技術への投資を大きく拡大していただくことができました」―。CSTI本会議で上山隆大常勤議員が石破茂首相に感謝を伝えた。第6期は補正予算によって科学技術関係予算を積み上げた。ベースとなる当初予算は横ばいが続き、政治判断で決定できる補正予算が成長の原資となった。補正予算を基金化し複数年にわたって利用する仕組みも浸透した。経済対策を目的とはするものの、単年度で使い切る制約がないため、当初予算よりも柔軟性の高い予算ともいえる。
第7期基本計画では「国力の基盤となる研究力の強化・人材育成」「社会変革をけん引するイノベーション力の向上」「経済安全保障との連携」が大きな論点になっている。CSTI議員の伊藤公平慶応義塾長は「科学技術政策の軸足は、どの時代においても研究者の好奇心と想像力に根差した学問に振り分けるべき」と強調する。菅裕明東京大学教授は「今すぐに基礎科学も含めた科学技術への投資の大幅な増額が性急に必要」と説く。
対して篠原弘道NTT相談役は「限られたリソースで成果を最大化するためには自律性、不可欠性の観点からテーマを絞り込むことが不可欠」と指摘する。第6期は科学技術に30兆円以上を投じるが「技術の網羅性よりもピカッと光る不可欠性技術を獲得する方が経済安全保障上好ましい」とする。
基礎研究も戦略研究もリソースの不足感が鮮明だ。そこで上山常勤議員は「国家安全保障に関わる国の予算を未曾有のレベルで基礎研究に導入する」と掲げる。そこから「マルチユースにつながるイノベーションを作り出す」という。そのため研究セキュリティーの整備が問題になる。手始めとして国研での体制整備が進められてきたが、多くの留学生を引き受けている大学に努力が求められる。第7期基本計画の策定は1年がかりの大仕事になる。詳細はこれからだが、大学は準備を始めておく必要がある。