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「国家安全保障関係予算の未曽有レベルでの導入」焦点に…第7期科技イノベ基本計画、策定始動

「国家安全保障関係予算の未曽有レベルでの導入」焦点に…第7期科技イノベ基本計画、策定始動

総合科学技術・イノベーション会議で発言する石破茂首相(右)(23日午後、首相官邸)

大学、研究成果保護課題に

内閣府総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)で2026年度から5年間の第7期科学技術・イノベーション基本計画の策定が始まった。研究力基盤の強化やスタートアップの創出などが論点に挙がっている。焦点の一つは国家安全保障関係予算の未曽有のレベルでの導入だ。大学は研究セキュリティーの体制整備が求められる。(小寺貴之)

※自社作成

「第6期基本計画では多くの政治家の先生方の多大なる尽力を得て、10兆円大学ファンドに代表されるように、国の科学技術への投資を大きく拡大していただくことができました」―。CSTI本会議で上山隆大常勤議員が石破茂首相に感謝を伝えた。第6期は補正予算によって科学技術関係予算を積み上げた。ベースとなる当初予算は横ばいが続き、政治判断で決定できる補正予算が成長の原資となった。補正予算を基金化し複数年にわたって利用する仕組みも浸透した。経済対策を目的とはするものの、単年度で使い切る制約がないため、当初予算よりも柔軟性の高い予算ともいえる。

第7期基本計画では「国力の基盤となる研究力の強化・人材育成」「社会変革をけん引するイノベーション力の向上」「経済安全保障との連携」が大きな論点になっている。CSTI議員の伊藤公平慶応義塾長は「科学技術政策の軸足は、どの時代においても研究者の好奇心と想像力に根差した学問に振り分けるべき」と強調する。菅裕明東京大学教授は「今すぐに基礎科学も含めた科学技術への投資の大幅な増額が性急に必要」と説く。

対して篠原弘道NTT相談役は「限られたリソースで成果を最大化するためには自律性、不可欠性の観点からテーマを絞り込むことが不可欠」と指摘する。第6期は科学技術に30兆円以上を投じるが「技術の網羅性よりもピカッと光る不可欠性技術を獲得する方が経済安全保障上好ましい」とする。

基礎研究も戦略研究もリソースの不足感が鮮明だ。そこで上山常勤議員は「国家安全保障に関わる国の予算を未曾有のレベルで基礎研究に導入する」と掲げる。そこから「マルチユースにつながるイノベーションを作り出す」という。そのため研究セキュリティーの整備が問題になる。手始めとして国研での体制整備が進められてきたが、多くの留学生を引き受けている大学に努力が求められる。第7期基本計画の策定は1年がかりの大仕事になる。詳細はこれからだが、大学は準備を始めておく必要がある。

日刊工業新聞 2024年12月26日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
科学技術のための基本計画が、社会のための科学技術の基本計画になり、国家のための科学技術の基本計画の側面が強まるのだと思います。自分もDARPAみたいなお金の流れがあればいいのにと思っていました。お金に色は付いてないので、求められる成果を出しつつ、好きな研究もできるだろうと。ただウクライナ侵攻が始まると、安易だったと反省しました。戦場で役に立つ技術は人の命を費やさないと掘り起こせず、費やせばローテクでコスパのいい技術がどんどん出てきます。ハイテクは現場を選びます。すでに民生分野であっても現場と研究室が乖離している問題があります。研究室のシーズを持っていっても現場では使えない、現場のニーズも表層的な困り事ばかりで科学に立ち返るニーズがなかなか拾えない。この問題をまずは民生分野で解かないといけないように思います。そしてマルチユースなら民生分野の技術として開発した方が研究管理は楽で、多様な人材、アイデアを巻き込めます。大学よりも、国研の管理された環境で進めた方がいいように思います。そのための器はすでにあるし、管理投資の重複を避けられ国家安全保障予算としても投資効率はいいはずです。研究者をクロアポで兼任させて国研でやらせればいいように思います。CSTIとしては産学連携やスタートアップ、大学改革など、科技政策で一通りのテーマは扱ってきて、残っているのが国家安全保障くらいしかないのだろうという見立てや、与党で世代交代があって、次の後ろ盾になってくれるのがこの分野の先生がたという見立てがありました。個人的には伊藤先生に頑張ってもらいたいです。そして、いま国が重要と認識している戦略領域の外で、個人戦の基礎研究からチーム戦になった規模の大きな研究が日本は弱いです。AlphaGoはVBがやりました。当時は何の役に立つのか微妙でしたが、いまに続くAIの流れを決定づけました。戦略の外の中・大規模研究を振興しないと、新しい流れを作る側に立てないように思います。

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