キーワードは「リアルタイム可変施肥」…新農機相次ぎ投入、井関農機が自信を示す技術力
井関農機は農業機械の新機種を相次いで国内で投入し、持続性の高い農業活性化への後押しを加速する。キーワードは「リアルタイム可変施肥」。担い手の減少が進み、肥料代が値上がりする中、農業活性化への有効な手段とされる可変施肥技術を生かし、国内の農業支援とともに市場を深掘りする。(編集委員・嶋田歩)
「リアルタイム可変施肥技術は当社が強みを持つ技術だ」。井関農機の冨安司郎社長は自社の技術力に自信を示す。水田で均一に肥料をまく均一施肥に対し、リアルタイム可変施肥は土壌センサーや作物生育状況の画像データで地力が低い場所と高い場所を識別し、施肥量を自動調節する。ムダな施肥量を減らして生産コストを削減でき、作物の品質安定にもつながるため農家の収入向上も見込める。
同社はリアルタイム可変施肥技術に強みを持ち、同技術を用いた田植機を開発し、既に発売している。
2025年に投入予定の製品の1つが、独BASFグループの栽培管理支援システム「ザルビオフィールドマネージャー」の地力マップとデータ連携できる作業機。24年11月にタカキタを通じて発売した機種に続き、25年1月にはササキコーポレーションが開発した機種も販売を始める。
井関農機のトラクターに装着して使うもので、同システムのセンシングマップデータを取り込んで施肥マップを作成し、それに基づいて圃場内の地力に応じた可変施肥作業を行う。車速連動機能でトラクターの速度に合わせてシャッターの開度を自動調整するため、高精度で散布できる。
25年春には、NTTe―Droneテクノロジー(埼玉県朝霞市)の農業用飛行ロボット(ドローン)の本格販売に乗り出す。
重量6・3キログラムで女性でも持ち運びやすく、1回の充電で2・5ヘクタールの農地に散布が可能。同社製を選んだ理由について、井関農機の担当者は「軽量・コンパクトで部品供給も含めたサービス体制が充実している」とメリットを話す。
またフライトコントローラーにより、送信機の画面上で散布範囲を定め、ルート設定すれば自動航行で散布可能。これにザルビオの地力マップとデータ連携させ、肥料を可変散布する。NTTe―Droneテクノロジーの滝沢正宏社長は「井関農機とともに国内農業に貢献していきたい」と意気込む。
国内で農家の高齢化が進む中、農業経験が少ない人でも対応できような機械と無人化や自動化に対応できる大型農業機械の開発が不可欠になっている。井関農機は自社技術にパートナー企業との販売・開発ノウハウを組み合わせることで、それらの需要を取り込む。