TX・ANA・資生堂…バリアフリーにデジタル技術、存在感高まる
鉄道業界などが、障がい者やインバウンド(訪日外国人)がスムーズに情報を把握したり相談したりできる環境を整えるため、デジタル技術の導入を進めている。首都圏新都市鉄道(東京都千代田区)はコンピューターグラフィックス(CG)を用いて手話で運行情報を配信する実証実験を実施。近畿日本鉄道は利用者と係員の会話を自動翻訳してスクリーンに表示するシステムを駅窓口に設けた。人手不足が課題となる中、スタッフの負担を極力減らした上でバリアフリーを実現する方法を探る。
つくばエクスプレス(TX)を運営する首都圏新都市鉄道はNHKの技術を用い、運行情報を手話CG動画として自動生成する実証実験を11月に実施した。動画はホームページ(HP)に掲載した。有用性を検証し、今後のサービスに生かす。
ANAは一部空港で実施していた遠隔手話通訳サービスを全国に拡大した。利用者は空港係員のタブレット端末などに表示された2次元コード(QRコード)を読み取る。オペレーターが画面越しに、利用者と係員の会話を手話と音声で同時通訳する仕組みで、プラスヴォイス(仙台市青葉区)と連携した。
資生堂は聴覚障がい者向けに手話、チャットなどによるオンライン相談サービスを始めた。店舗に手話ができるスタッフが少なく、筆談だと時間がかかるといった声に応えた。
近鉄は大阪難波駅、奈良駅と丹波橋駅の窓口に、京セラドキュメントソリューションズジャパン(大阪市中央区)の字幕表示システムを導入した。英語やベトナム語など7言語に対応する。
多言語や手話でのコミュニケーションが堪能な人材の需要は高く、採用は容易ではない。少ない人数で手厚いサービスを実現するため、デジタル技術の存在感は高まりそうだ。
日刊工業新聞 2024年12月06日