「交通空白」解消、ライドシェアの可能性
人口が減少する中、多くの地域で公共交通機関が存続の危機にある。国土交通省は7月、国交相を本部長とする「交通空白」解消本部を設置、11月には「官民連携プラットフォーム」を立ち上げた。地方自治体や交通事業者などあらゆる関係者と連携し、タクシーや乗り合いタクシー、ライドシェアなどを総動員して交通空白解消に組んでいる。
期待が高まるのが自治体やNPO法人が運用する公共ライドシェアと、タクシー事業者が運用管理する日本版ライドシェアだ。鉄道やバスなどの公共交通機関が維持できない地域でも、自家用車と一般ドライバーを活用する仕組みは導入しやすい。
公共ライドシェアはボランティア的運用から持続的な事業への移行が課題。料金はこれまでのタクシーの2分の1程度から8割に引き上げた。事業者も農協や生協、医療法人、商工会、宿泊施設などに拡大、地域に合った運用を目指している。運用区域の柔軟対応やダイナミックプライシングなども導入し、観光地の2次交通としても活用する。
都市部のタクシー不足対策として、4月から東京、横浜などで日本版ライドシェアが始まった。主要都市への拡大、配車アプリが普及していない地域での運用、運行条件を悪天候時や大規模イベント時などに拡大、貨客混載などサービスを広げ徐々に定着しつつある。今後の焦点はタクシー事業者以外の交通事業者による運営の可否だ。国は当初、6月にも方向性を示す考えだったが、タクシー業界の強い反対もあり、まだ結論を得ていない。
コロナ禍が明けインバウンド(訪日外国人)が回復する中で、観光の足の確保も重要だ。7月時点で約1700の自治体中、約600ではどちらのライドシェアの導入予定もなかった。国交省はこうした自治体には伴走型で支援する。11月に就任した中野洋昌国交相は地域交通の再生を地方創生の柱に据える。「まずは日本版ライドシェアの実施状況を検証、評価することが必要」とする。