取引段階別の価格転嫁状況、中小企業庁の初調査で分かったこと
経済産業省・中小企業庁はサプライチェーン(供給網)の取引段階別の価格転嫁状況を初めて調査した。コスト上昇分に対する価格転嫁率は1次取引先が51・8%だったのに対し、階層が深くなるにつれて減少し、4次取引先以上では35・7%だった。一方、調査回答全体の価格転嫁率は3月の前回調査と比べ3・6ポイント増の49・7%に上昇。価格交渉は前進しているが、供給網全体への浸透が課題となる。
2次、3次取引先の転嫁率はそれぞれ46・1%、39・7%だった。全く価格転嫁できなかった、もしくは価格を減らされた企業の割合も1次では18・2%だったのが4次以上では36・0%だった。企業庁によれば「階層が深くなるほど企業規模が小さくなり価格交渉力が劣る」「各段階の手数料が引かれ原資が減る」といった声があるという。かねて「取引段階が深くなるほど価格転嫁が行き渡っていない」という指摘はあったが、今回の調査であらためて浮き彫りになった形だ。
9月の価格交渉月間を受けたフォローアップ調査の中で、新たに、供給網の取引段階別の価格転嫁状況を設問として加えた。同調査は全国約30万社を対象とし9―11月に実施。5万1282社から回答を得た。調査は半年に1度実施している。
全体の傾向として状況は好転している。価格交渉できた企業の割合は、前回調査比1・2ポイント増の86・4%となった。このうち発注側からの申し入れで交渉が行われた企業の割合は、同2・0ポイント増の28・3%に伸びた。
また一部でも価格転嫁できた企業は同2・7ポイント増の79・9%で、全く転嫁できない、もしくはマイナスの割合も同2・7ポイント減の20・1%と縮小した。ただ企業庁は「それでも転嫁できない企業は2割残っており、できる企業とできない企業の二極化がみられる」と、さらなる転嫁対策の重要性を訴える。
このほか、今回は官公需における価格交渉や価格転嫁の実態も初めて調査した。受注後に人件費やコストが上がれば単価の変更はできるが、入札で価格が決まっているため交渉は不要とする企業が59・9%に上った。今後は制度の周知も焦点となりそうだ。