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「米大統領選」迫る…原油・非鉄相場、影響は?

「米大統領選」迫る…原油・非鉄相場、影響は?

※イメージ

11月5日の米国大統領選挙は世界情勢を左右し、投資家も注目するイベントの一つだ。米国の利下げや中東情勢の悪化で原油価格は上昇。ロシア産非鉄のロンドン金属取引所(LME)での新規取り扱い禁止や中国の景気回復期待から銅価格も5月に高騰した。原油や非鉄金属の先物相場は世界情勢の影響を受けやすく、大統領選後の市場の反応についてどのような予想があるのかを調べた。(編集委員・丸山美和)

原油 環境規制強化、消費を抑制

民主党副大統領のカマラ・ハリス候補が当選し、バイデン政権下で強化してきた環境規制を維持すれば、原油価格は下がると予想されている。日本総合研究所の栂野裕貴研究員は「自動車の温室効果ガス排出規制は、米国の新車販売に占める電気自動車(EV)の比率を大幅に押し上げる。このためガソリンなどの原油消費を中長期的に抑制する公算が大きい」と説明する。

原油相場とLME銅3カ月先物相場

ただハリス氏は気候変動対策を重視しつつもシェールオイル・ガス開発を容認しており、「規制強化による原油生産の下押し圧力は限定的」(栂野氏)という。

一方、共和党前大統領のドナルド・トランプ候補が再選されれば、バイデン政権下の政策を大きく変更し、原油価格が上振れする可能性があるとみられている。日本総研の松田健太郎副主任研究員は「トランプ氏は大幅に減少した石油戦略備蓄を補充する公約を掲げ、需給の引き締まり観測で上昇圧力がかかる」といい、イランへの制裁強化といった強硬な政策をとる可能性も高く、原油高リスクの増大を指摘する。

中長期的にもトランプ氏の政策をめぐる不確実性によって原油関連設備への投資が進まなければ、原油生産の停滞を招きかねない。「反グリーン政策の影響でガソリン需要が増加し、需給逼迫(ひっぱく)が考えられる」(松田氏)と説く。

非鉄 米中関税引き上げ焦点

非鉄金属相場については「トランプ氏だと下落圧力は生じるものの、大きく上昇する可能性もある。ハリス氏であれば下落圧力は出にくいが、上昇圧力も出にくい」(楽天証券の吉田哲コモディティアナリスト)との見方が出ている。米中間で関税の引き上げ合戦が起きるかどうかが焦点という。

トランプ氏が当選すれば、関税引き上げをきっかけに相場に下落圧力がかかる。だが、再び「トランプラリー」と呼ばれる上昇相場となり、リスクオンのムードが生じれば「非鉄相場は上昇し得る」(吉田氏)。さらに「トランプ氏が米連邦準備制度理事会(FRB)に対して発言すれば利下げが進み、大きく上昇する可能性が高まる」(同)という。

一方、多様性を政策に反映するとしているハリス氏が選ばれれば、政策決定に時間がかかり経済に停滞感が生まれると予想されている。選挙直後は批判も少なく、原油も非鉄も様子見の姿勢が続くが、政権の色がはっきりとする1年後には相場が大きく影響を受けている可能性がある。

日刊工業新聞 2024年10月23日

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