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富士フイルム「チェキ」・カネカ「グミ」…機能化学の技術力、消費財でも存在感

富士フイルム「チェキ」・カネカ「グミ」…機能化学の技術力、消費財でも存在感

富士フイルムHDの「instax WIDE 400」

機能化学各社が消費財でも存在感を発揮している。各社とも、最近は半導体や医薬、自動車などの成長領域で業績を伸ばしている。ただBツーB(企業間)取引が圧倒的で、その技術力を消費者が目にする機会はそう多くない。だが各社とも研究開発に注力してきた。消費者の立場で購入し、実際に手にすることのできる製品もある。(渋谷拓海)

富士フイルムHD チェキ・化粧品を幅広く訴求

写真フィルムの国産化を目指して1934年に創業した富士フイルムホールディングス(HD)は、半導体や医薬の領域で使う材料や機器を手がける。BツーB事業が大きくなった一方、カメラや化粧品を消費者向けに販売。最近は特に「チェキ」の愛称で親しまれているインスタントフォトシステム「instax(インスタックス)」シリーズが国内外で伸びている。

撮影したその場でプリントできる手軽さや写真の独特の質感が特徴で、目新しさからスマートフォンを駆使する若い世代が支持しているようだ。7月には、カードサイズのミニフォーマットフィルムの2倍の大きさに対応した「instax WIDE 400」を発売。複数人のグループショットや風景の撮影がしやすく、余白を生かした表現が可能になった。主な購入層だった若年女性のほか、男性や壮年層への訴求を進める。

化粧品にも力を入れている。かつてデジタル技術の進展に伴い写真フィルム市場の急減を経験した同社は“技術の棚卸し”をした。そこで生まれたのが、有用成分の微細化・安定化技術を活用したスキンケアシリーズ「ASTALIFT(アスタリフト)」だ。

富士フイルムホールディングスの高保湿持続ジェル「ASTALIFT Opme gel」の本体外観

写真フィルムの主原料でもあるコラーゲンの研究や、現像した写真の色あせを抑える抗酸化技術なども生かした。女性用だけでなく、男性用も展開。ラインアップを拡充しており、29日には肌がべたつきにくい高保湿持続ジェル「ASTALIFT Opme gel(アスタリフトオプミージェル)」を発売する。新製品は化粧水や美容液、乳液、クリームの役割を担い、肌あれやシミ・そばかすを防ぐという。

カネカ グミで手軽に健康づくり

カネカは健康を重視した製品を展開している。子会社のカネカ食品(東京都新宿区)は還元型コエンザイムQ10を手軽に摂取できるグミ「わたしのチカラ『カネカQ10果実グミ』」を全国のセブン―イレブン店舗で発売した。

「わたしのチカラ『カネカQ10果実グミ』」レモンソーダ味(左)とジューシーピーチ味

内容量は1袋40グラムとし、「レモンソーダ味」「ジューシーピーチ味」の2種類を展開中。グミにはとろりとした食感の果汁ジュレが入っており、一度に二つの食感を楽しめるという。好評のため、販売地域を首都圏から全国へと広げた。

還元型コエンザイムQ10は、エネルギーを作り出すために必要な補酵素の一つとなる脂溶性のビタミン様物質だ。カネカは独自の発酵技術により、酵母から還元型コエンザイムQ10素材を量産することに成功。自社グループをはじめ、国内外の製薬会社やサプリメントメーカーにも同素材を供給している。新製品ではこれを菓子に配合することで、仕事や家事の休憩時間から消費者の健康を支える。

カネカは化学業界では珍しく、牧場を使った事業も展開している。別海ミルクワールド(北海道別海町)と有機生乳の製造・販売を担う別海ウェルネスファーム(同)を2020年に設立し、有機専用牧場で生産性の高い有機酪農に取り組む。

生乳は全量をカネカが買い取り、ヨーグルトを中心に牛乳やバターなど有機乳製品の品揃えを拡充。3月には同牧場の牛乳を『オーガニック生乳でつくった有機牛乳』としてライフコーポレーションの店舗で発売した。

信越ポリマー 色付きラップに人気

信越化学工業グループの信越ポリマーは、食品などを包装するラップフィルムで攻勢をかける。同社とその子会社のキッチニスタ(東京都千代田区)では塩化ビニール樹脂のラップフィルムを手がけてきた。よく伸びてくっつきやすいのが特徴で、青く着色した製品は破片の混入を発見しやすいとして飲食店やホテルなどの業務用で普及した。

塩化ビニール樹脂製の色つき小巻ラップフィルム「デコラプ」

22年に消費者向けとして発売した抗菌仕様の小巻の「デコラップ」は、青、黄、赤の3色。おにぎりに巻くなどして弁当に気軽に彩りを添えられるほか、工作にも使える。透明なラップフィルムで色つきは異例とも言えるが、人気がじわりと増しているという。電子商取引(EC)サイトを中心に販売中だ。

東亞合成 光硬化タイプの瞬間接着剤

瞬間接着剤「アロンアルフア」はさまざまな種類を用意

東亞合成の瞬間接着剤「アロンアルフア」は、家庭用で安価品を除く国内売上高シェアで8割を占める。盤石な地位を持つが、23年に光硬化性を持たせた新製品を投入した。付属のライトを照射することで、硬化時間を短縮。接着した周辺が白くなる現象を防ぎ、接着面積が小さい部分の接着やコーティング用途など、従来品では難しかった用途に活用の幅を広げた。容量は4グラム。発売元のコニシを通じ、全国の小売店などで発売している。

日刊工業新聞 2024年8月14日

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