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中国けん引のカメラ市場、ニコン・富士フイルム・キヤノンなど深耕へ高単価機種

中国けん引のカメラ市場、ニコン・富士フイルム・キヤノンなど深耕へ高単価機種

カメラ各社は24年のパリ五輪などを見据え、新製品の展開を加速する(ソニーの「α9 Ⅲ」)

カメラ市場が回復基調にある。けん引役とも言える中国での需要は底堅く、為替の円安の追い風もあり、高単価機種の販売が好調に推移して出荷額が伸長。コロナ禍の収束に伴って消費者の外出や撮影の機会が増えたことも寄与している。他方、相次ぐ新製品の発表で各社の販売促進活動が活発化し、2024年のパリ五輪などを見据えた製品開発も加速する。競争が激化する中、各社は供給体制のさらなる強化が求められそうだ。(阿部未沙子)

デジタルカメラ出荷台数と平均単価

「中国の強さがカメラ市場をけん引している」―。カメラ映像機器工業会(CIPA)の担当者はこう語る。CIPAによると、23年1―9月のデジタルカメラ総出荷台数は前年同期比0・6%減の約569万台。総出荷額は同11・7%増の約5253億円に伸びた。出荷台数のうち中国向けは約118万台で、コロナ禍前の19年1―12月の約145万台に迫りつつある。

一方、日本向けの出荷台数は、19年は約231万台だったが、22年は約92万台に減少。欧州向けの22年は、19年比50・3%減の約239万台となった。

中国の22年の出荷台数は約125万台。19年比で減少しているものの、他地域と比べると減少幅は小さい。23年も底堅く、CIPA担当者は「中国経済が冷えていると聞くが、カメラは好調」と捉える。ニコンの徳成旨亮取締役専務執行役員も「中国経済減速の影響は、それほど感じていない」とする。

中国市場の深耕や日本・欧米での巻き返しを視野に、メーカー各社は単価の高い中高級機種にも力を注ぐ。例えばニコンは消費税込みで約60万円の「Z8」への引き合いが好調という。旅行などの外出機会の増加を踏まえ、カメラ各社は販促活動を積極化してきた。富士フイルムの後藤禎一社長は「矢継ぎ早に新製品を出した」と振り返り、キヤノンの浅田稔専務執行役員は「競争の激化が見られた」と受け止める。

富士フイルムはミラーレスカメラのほか、手のひらに収まる小型カメラ「インスタックス パル」を発売。後藤社長は新製品のパルについて「増産をかけている状況」と手応えを示す。

スポーツ競技を撮影する用途での需要を見込んだ新製品の発表も相次ぐ。ソニーはミラーレスカメラの新製品「α9 Ⅲ」を24年1月26日に発売予定。動く被写体を撮影した際に生まれる歪みをなくす「グローバルシャッター方式」を採用した。キヤノンもスポーツ競技に適した超望遠ズームレンズを発表した。

これらは24年のパリ五輪も見据えた製品と言える。報道機関や写真家といったプロフェッショナルから趣味で写真を楽しむ層まで幅広い需要をメーカー各社が着実に取り込むためにも、各国の年末商戦に向けた供給体制の一段の強化が求められる。


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日刊工業新聞 2023年11月21日

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