「商習慣の見直し」「荷主・消費者の行動変容」…ドライバー残業規制4カ月、物流改革の現在地
トラックドライバーの残業規制が始まって4カ月、国土交通省を中心に「物流の効率化」「商習慣の見直し」「荷主・消費者の行動変容」を柱とする物流革新に向けた取り組みが進められている。何も対策を講じないと2030年には34%の輸送力が不足するという危機感の下で、政府は23年6月の「物流革新に向けた政策パッケージ」を取りまとめた。1年を経た7月25日、関係閣僚会議で進捗(しんちょく)と今後の課題が報告されたが、物流革新はまだ緒に就いたばかりだ。
物流の効率化については、自動化機器の導入やデータ連携など即効性のある補助事業に1年間で約140件を採択した。脱炭素化を促す電気自動車(EV)トラックは約3000台を支援。物流施設への再生エネルギーの導入実証には約50件を採択した。6月には官民協議会でパレットの標準規格を整理、このパレットで荷役時間短縮に取り組む事業支援に約20件が申請中だ。物流データ連携による共同輸送などの支援の採択は2件。こうした意欲的な取り組みを早期に拡大するかが課題となる。
インフラ整備も進む。1台で2台分の荷物が運べるダブル連結トラックが高速道路で走行できる区間を北海道などにも拡充した。中期対策として高速道路での自動運転支援や、河川や送電網上空への飛行ロボット(ドローン)航路の設定などに取り組むデジタルライフライン全国総合整備計画を策定した。
国際交通貨物の強化のために成田空港の滑走路新設やアクセス道路の早期整備も進める。10年後に実用化を目指している高速道路の空きスペースをパレットが自走する自動物流道路は、まず新東名高速道路の建設区間で社会実験に取り組む。商習慣の見直しについては、荷主が適正な運賃を支払うよう国交省と経済産業省、農林水産省が合同で改正物流効率化法の施行に向け取り組みを進める。また、運送業者を守る「トラックGメン」による悪質な荷主の是正ではこれまでに811件の法的措置を実施。荷主情報のデータベース化を進める。
三つ目の柱の荷主・消費者の行動変容では、宅配の再配達率を12%から6%への半減に向け、10月からポイント還元実証を始める。電子商取引(EC)事業者や物流事業者に国が1配達当たり最大5円を支援する。
岸田文雄首相は「物流2024年問題という変化を力に変え、物流革新に一丸で取り組め」と指示する。物流は産業の血流、物流を高度化することは国力の底上げに直結している。