三菱重工・川重…ボーイング「787」機体の減産解除、国内航空機活性化へ
航空機機体製造大手が米ボーイングの中型機「787」向けの減産体制を解除する。三菱重工業は名古屋航空宇宙システム製作所大江工場(名古屋市港区)で主翼の生産能力を月産5機から7機に引き上げた。川崎重工業も前胴などの生産能力を8機にした。「787」は機体製造の35%を日本のメーカーが担当しており、サプライチェーン(供給網)の裾野も広い。民間航空機市場はコロナ禍で一時落ち込んだが、着実な成長が見込まれる。機体製造が増産基調に入ることで国内航空機産業も活性化しそうだ。
ボーイングは2026年までに「787」の生産レートを月産10機に引き上げる見通し。「787」の生産には日本のメーカーが深く関わっており、主要な構造部位を三菱重工、川重、SUBARUの3社が手がける。担当部品は国内で製造された後、米国の工場に送られて最終組み立てが行われる。足元でボーイングは主力小型機「737MAX」の事故で新規受注が低調に推移するが、安全性と品質強化に向けた取り組みを加速している。
三菱重工は大江工場で最大で月産14機の生産体制を整えていたが、コロナ禍による需要減退で生産体制を縮小した。現状、平均で同5機を製造している。生産能力を超える場合、従来は外部委託や派遣労働者・請負労働者の活用が必要だったが、搬送の自動化や検査工程の人工知能(AI)導入に加え、技能の習熟度を高めることで生産リードタイムを短縮。従業員1人当たりの生産性を21―22年比で約3割高め、生産能力を同7機に引き上げた。
川重は同14機の能力を持つ名古屋第一工場(愛知県弥富市)で、生産能力を同8機に引き上げた。現状は平均で同5機だが「増産を待っている状況」(下川広佳専務執行役員航空宇宙システムカンパニープレジデント)。人材採用を進め、一段の増産にも対応できる体制を整える。
SUBARUも「長い目で見れば(需要が)伸びるのは間違いない」(齋藤義弘執行役員航空宇宙カンパニープレジデント)とし、ドリル装置の開発や自動化など生産効率化を進める。