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生成AIブームで全て好転へ…リンテック、業績上振れ

半導体関連装置、好調

リンテックの電子デバイス材料事業は曇り空から晴れ間が見え始めた。2022―23年の市況低迷が響き、稼ぎ頭だった半導体製造向け粘着テープや関連装置などの販売にブレーキがかかっていた。ただ、生成人工知能(AI)ブームで全てが好転しつつある。5月に24―26年度の新中期経営計画を発表したばかりだが、事業売上高目標(最終年度765億円)から上振れが期待できそうだ。(編集委員・鈴木岳志)

※自社作成

「現3カ年計画の数字をつくったときはどん底のさらに底だった。今ならもう少しポジティブな数字をつくるだろう。(市況回復の)時間軸が読めるようになったからだ」とアドバンストマテリアルズ事業部門長の持田欣也常務執行役員は明かす。26年度の同事業売上高目標は前中計で掲げた780億円に比べ低めに設定し、23年度比では27%増を見込む。

「生成AIがトリガーになっている。AIを背景にいろんなものが動き始めた」と生成AIの社会実装が全てを変えた。半導体製造の後工程で使う材料・関連装置や積層セラミックコンデンサー(MLCC)用剥離フィルムが強みのリンテックは、特に規模が大きいスマートフォン市場の動きに業績を左右されやすい。

24年初頭に世界大手から生成AI搭載スマホが登場し、今後もスマホ中心にタブレット端末やパソコンへの展開が見込まれる。その中で、テープ材料メーカーとして、半導体メモリー市況の回復、それも金額ベースではなくウエハー消費量を注視している。

持田常務は「ウエハー消費量が上がっていく時期は当初、今夏以降と思っていたが、少し後ろにずれそうだ。ただ、26―27年にかけてマイナスに向かうと言う人はほぼいない」と明るい兆しに安堵する。市況回復のけん引役は生成AIと、それに使われる広帯域メモリー(HBM)だ。

同社は“HBMバブル”にうれしい悲鳴を上げる。HBM向け絶縁接着フィルムの貼付装置やその周辺装置を手がけており、バブル前と比べてケタ違いの受注量に大騒ぎだ。

現在は急ピッチでサプライチェーン(供給網)の強靱(きょうじん)化に取り組んでいる。「協力工場を増やしたり、頭を下げて1直を3直にしてもらったりしたが、それでもギリギリだ。あと、台湾と韓国で装置フィールドサポート人員を増やさないといけない」と体制強化で需要増に応じる。

同社の貼付装置などはHBM製造のデファクト・スタンダードになっているという。AI時代に不可欠な存在と言っても過言ではなく、いま強烈な追い風が吹いている。

日刊工業新聞 2024年07月15日

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