マグネシウム合金の降伏強さ1割増強、熊本大学が成功
熊本大学の井上晋一助教と河村能人教授らは、マグネシウム(Mg)合金の降伏強さを、従来のKUMADAI耐熱合金に比べて1割ほど増強することに成功した。硬質層と軟質層の積層構造を作り、この間隔を広げて強化を施す。汎用の高強度マグネシウム合金押出材と比べると1・7倍になる。航空機や飛行ロボット(ドローン)などの軽量化が求められる分野に提案していく。
マグネシウムに亜鉛やイットリウムを加えて硬質層を作製した。硬質層の厚みは1ナノメートル(ナノは10億分の1)。平均間隔は約12ナノメートルで非周期的な積層構造をとる。従来は平均間隔が1ナノメートルで周期的な積層構造の合金を開発していた。周期は12倍以上に広がり、合金添加量が半減した。
マグネシウム合金は押し出し加工で強化する。硬質層の結晶が折れ曲がり、変形が起きにくくなる。降伏強さが375メガパスカル(メガは100万)から418メガパスカルに向上した。汎用高強度合金は245メガパスカルだった。マグネシウムは酸素と激しく反応して燃える。開発合金の発火温度は770度Cのため難燃性を備えるといえる。
マグネシウムの比重はアルミニウムの3分の2と軽い。熊本大発ベンチャーで実用化を進める。ロケットや航空機、携帯端末などの軽量化に提案する。
日刊工業新聞 2024年5月10日