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新生シリコンアイランドへ、九州の産学官金がまとめた全体構想の全容

新生シリコンアイランドへ、九州の産学官金がまとめた全体構想の全容

「イノベーション・マルチハブ」のイメージ

半導体の“イノベーション・マルチハブ”に―。半導体産業が集積する九州で、「シリコンアイランド九州」の新たなグランドデザイン(全体構想)がまとまった。半導体の生産・応用、トップ級をはじめとする人材輩出でリードし続けることを目指す。構想策定の中心的役割を担った九州経済連合会は、グランドデザインに沿った取り組みを進めるべく動き始めた。(西部・関広樹)

策定に向けた協議は産学官金のメンバーで1月にスタートし、「苦労に苦労を重ねて策定に至った」(九経連の倉富純男会長)。そして6月に熊本県で開かれた九州地域戦略会議で承認された。同会議は官民一体で地域独自の発展戦略の具体的施策を推進することを目的に、九州・沖縄・山口の各県や経済団体のトップが出席する。

今回まとめたグランドデザインは、産学官金の各者で共有する基本方針の位置付けとなる。将来にわたり世界の産業サプライチェーン(供給網)の中核を担い続ける「新生シリコンアイランド九州」の実現を目指す。

策定に当たっての視点として、半導体の需要と供給の連携、デジタル産業の需要創出、大学や研究機関との密接な連携、まちづくりなどを盛り込んだ。先進地として台湾「新竹サイエンスパーク」など海外から学ぶことも挙げる。

グランドデザインに描かれたのは、ビジネスエコシステム(生態系)の中核となる産学連携拠点を多極的に整備し、各拠点が連携する姿「イノベーション・マルチハブ」だ。半導体を作る側と使う側の企業を中心に、ビジネスモデルを創出するエコシステムを築く。また、「作る」「使う」双方の技術系トップ人材を育成する。

目指す姿の実現に向け、テーマごとに課題整理マップをまとめた。テーマにはまちづくり、公的支援・金融支援の確保、地域連携・国際連携も含む。

7月中には域内各県や九州経済産業局、大学、経済団体などで「新生シリコンアイランド九州情報連絡会」を設置する。情報共有や意見交換、連携検討などの場を設ける。

また、九経連は産業振興・デジタル推進委員会に半導体戦略専門部会を置く。半導体関連産業や大学だけでなく、エネルギー、金融、物流、まちづくり分野からもメンバーを加える考え。10月までに初回会合を開催する方針だ。倉富会長は「進化し続ける流れを作っていくため、知恵を出し合う」と意気込む。

日刊工業新聞 2024年07月08日

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