防衛用が受注呼び水に…開発相次ぐ「長距離ドローン」、それぞれの性能
自治体の災害対策にも
国内の飛行ロボット(ドローン)メーカーが長距離飛行が可能な機体を相次ぎ開発している。従来はリチウムイオン電池(LiB)で飛行時間が15分程度の空撮用マルチコプター機種が中心だったが、防衛用途には性能不足。加えて、広域災害後の人命救助や砂防ダム監視向けに自治体からの需要も高まっており、長距離・長時間を飛べるドローンは業界の主要な開発テーマになりそうだ。(編集委員・嶋田歩)
「2024年に入り、防衛省関係の引き合い件数がすごく増えている」。テラ・ラボ(愛知県春日井市)の松浦孝英社長は、防衛用途での需要をこう捉える。同社は23年9月、防衛省・自衛隊とのマッチングを図る「防衛産業へのスタートアップ活用に向けた合同推進会」に参加した。
現在、航続距離1000キロメートル、飛行時間10時間で垂直離発着が可能な長距離無人航空機「テラ・ドルフィンVTOL」を売り込み中で、海上自衛隊、海上保安庁、警察庁などから引き合いがあるという。松浦社長は、中国船監視などの防衛用途だけでなく「滑走路が要らないため災害直後の広域捜索にも利用できる」とPRする。
エアカムイ(名古屋市緑区)も、24年1月に防衛装備庁が開いた「防衛産業参入促進展」に出展。主力商品の「AirKamuyΣ―1」は翼長3・5メートルで飛行時間が6時間だが、より大型機で10時間飛べる「Σ―2」も計画中だ。翼を短く折りたためるため軽トラックで運べる。
山口拓海最高経営責任者(CEO)は、「防衛用途に加え、重要施設の民間警備や物流用途にも使える」と多様性を強調。Σ―2はガソリン燃料に加えて自衛隊の指定燃料にも対応するほか、衛星通信対応で最大10メガビット(メガは100万)の高速データをやりとりし、モジュール化で機器更新を行えるようにする。
空解(東京都町田市)は、最大400キロメートルを飛べる垂直離着陸機(VTOL)型固定翼ドローンを開発した。繊維強化プラスチックを多用し、軽量化を実現。同社にも海上保安庁や自衛隊から引き合いがあるという。森田直樹最高マーケティング責任者(CMO)は「30倍ズームカメラや夜間用赤外線カメラを搭載し、海洋監視や海岸線監視、国境警備に利用できる」とアピールする。
滞空時間が数十分しかない小型ドローンは中国のDJIが高いシェアを持ち、価格競争も激しい。しかし防衛など官公需向けは安全保障上の見地から中国製が排除される上、低価格要求も小型機ほどは強くない。国産メーカーは故障対応や部品供給の体制にも強みを持つだけに、今後、国内の長時間飛行のドローンの市場成長が期待される。