普通鋼電炉11社の通期見通し、9社が経常減益の背景要因
普通鋼電炉メーカー11社(非上場含む)の2025年3月期業績予想は、9社が経常減益を見込む。人手不足に伴う工期遅れなどから建設向けの鋼材需要の低迷が続くほか、鉄スクラップ価格や電力料金の値上げ、人件費、物流費などのコストアップも響く。今期もコスト上昇分を適切に価格に反映できるかが、各社の業績に影響を与えそうだ。
共栄製鋼の国内鉄鋼事業は建設需要が前期と同水準ながら、工期遅れの継続などから市場環境は弱含むと予想する。製品出荷量は前期並みで進みそうだが、鉄スクラップ価格やエネルギー費などのコスト動向については「円安傾向により、電力や副資材など輸入関連資材の高騰が避けられない。さらに物流問題から配送コストや労務・人件費なども上昇する」(廣冨靖以社長)と懸念する。
北越メタルも主な需要先である建設業界で建設用鋼材の需要が悪化しており、25年3月期も前期同様「国内建設需要の大幅な回復は見込めない」(田村寛執行役員)と見る。
東京製鉄は鋼材需要が国内製造業の需要回復を受けて堅調に推移するため、売上高は過去最高を見通す一方、販売単価の減少や鉄スクラップ価格の上昇を見込んでいるため経常減益を予想する。
中山製鋼所は販売数量について、製造業や建築向けで低迷する鋼材需要が下期には徐々に回復すると予想する。また、23年に発生した同社工場の電気炉トラブルが解消され、鋼板類の拡販量が5―6%改善される見込み。ただ「物流費や電力料金、労務費や外注費など表面化しているコスト増分が、前年度比約20億円程度上昇する」(箱守一昭社長)とする。
一方、24年3月期は7社が経常増益となった。諸コストの上昇に伴う製品値上げが浸透していることに加えて、鉄スクラップの価格が高値ながらも安定して推移したことが寄与した。
日刊工業新聞 2024年05月24日