経常益6社増益・5社減益、電炉11社の4-12月期の全容
普通鋼電炉11社(非上場含む)の2023年4―12月期決算の経常利益は、建築・土木関連の需要が振るわない中、電気代などの負担減で6社が増益、5社が減益となった。今後は鉄スクラップ価格が上昇基調にあるためスプレッド(原料と鋼材の値差)の縮小が予想され、適正な製品価格を確保できるかがカギを握る。24年3月期通期の経常利益予想は東京製鉄、合同製鉄、中山製鋼所、大和工業、東京鉄鋼が上方修正する一方で、大阪製鉄と北越メタルは下方修正した。
23年4―12月期に経常増益となった6社のうち、東京鉄鋼は前年同期比2・5倍、伊藤製鉄所(非上場)は2倍弱の伸び、トピー工業、合同製鉄、共英製鋼は50%程度の増加になった。共英製鋼は「通期で国内鉄鋼事業の利益は若干下がるが、海外鉄鋼事業の赤字幅は縮小する見込み」という。
これに対し、経常減益だった5社のうち中山製鋼所、大阪製鉄、中部鋼鈑、北越メタルは前年同期に比べ2ケタ減。同8%減となった東京製鉄は「23年10―12月はコストをかなり厳しめに見ていたが、実際は想定までには至らなかった。営業利益は計画より上がった」(小松崎裕司取締役常務執行役員)。
一方、24年3月期通期の経常利益予想を上方修正した5社中、合同製鉄は従来の前期比1ケタ増から2ケタ増とし、大和工業は減益から増益予想に転換。東京製鉄は従来予想比10億円増、東京鉄鋼は同15億円増とした。
従来予想比で5億円積み増した中山製鋼所は「当初は減販を見込んでいたが、(電炉各社の)コストアップに伴う値上げにより底値感から仮需が発生し、一定量は確保できそう」と前向きな見方に改めた。
また北越メタルは経常利益について、従来予想の前期比1・5%増から一転、同42・6%減に下方修正した。同社は「需要低迷で製品販価の維持が難しく、製造コストも上昇している」と説明している。
電炉各社は諸コストの先行きについて懸念を示す。「電気代や副資材コストなどは前年に比べ落ち着いている」(共英製鋼)状況だったが、「(23年1-3月のピークの後、少し下がった)電気代は現在、またぶり返しつつある」(東京製鉄)との声もあり、価格転嫁の可否が業績を左右しそうだ。