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電動車・環境対応に生かす、自動車部品メーカーの加工技術の強み

電動車・環境対応に生かす、自動車部品メーカーの加工技術の強み

オティックスが開発した端子一体導線。エンジン部品の量産で培った塑性加工技術を応用した

軽量・小型化・一体化で工夫

自動車部品メーカーがエンジン部品などで培った加工技術の強みを、電動車向け部品や環境対応製品といった次世代製品でも発揮している。豊富な技術のバリエーションにより顧客の要望に合わせた最適形状や軽量・小型化、一体化などを可能にし、コスト低減やカーボンニュートラル温室効果ガス排出量実質ゼロ)対応を実現する。24日までパシフィコ横浜(横浜市西区)で開かれている自動車技術の展示会「人とくるまのテクノロジー展2024 YOKOHAMA」でも、部品各社の工夫の一端が披露されている。

オティックス(愛知県西尾市)はエンジン部品の量産で培った塑性加工技術を応用し、モーター用動力線などでの使用を想定する「端子一体導線」を開発した。従来は熱カシメで端子と導線を接合していたが、開発品は棒形状の材料を縮径したり、つぶしたりすることで一体化を実現した。

同社は自動車用エンジン動弁系部品を主力としているが、近年はコア技術を生かし、さまざまな電動車部品に参入している。端子一体導線は製造時の二酸化炭素(CO2)排出量の削減が可能な上、「低コスト化も提案できる」(オティックス)という。

愛三工業の電池セルケース・カバー。来年4月からの量産を計画している

愛三工業は2025年4月から電池セルケース・カバーの量産を計画する。セルケースは深絞り成形や薄肉化、スクラップ量低減を目指したプレス成形により材料の歩留まりを向上。電池容量の拡大と低コストで差別化する。

従来のプレス技術に加え、技術力の向上や安定供給に向けて電池ケースの生産に強みを持つアイエムアイ(群馬県富岡市)を23年11月に子会社化した。さらなる低コスト化などに向けて次世代技術も検証中だ。

排気系部品を主力とする三五(名古屋市熱田区)は、パイプ塑性加工や板金プレス、棒材・線材加工、接合など幅広い金属加工技術を持つ。顧客の新たなニーズに対応するため新規技術開発に取り組み、特徴的な技術を実用化してきた。展示会のブースではこれらの加工技術のほか、欧州の厳しい排ガス規制にも対応する排気システムなどを紹介した。

マツダのスポーツ多目的車(SUV)「CX―80」欧州仕向けの尿素SCR排気浄化システムもその一つ。一般的には円筒形の触媒キャニングを楕円(だえん)形に加工することで、限られた空間で最大限の浄化性能を確保した。三五で技術部門を担当する山田高志執行役員は「ハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)など、まだまだ排気システムのニーズが高い。環境対応への取り組みを見せたい」と意気込む。

電動車の中でも特に電気自動車(EV)は大容量のバッテリーを搭載するため車両重量が重くなる傾向にある。燃費・電費性能の向上に向けては、部品レベルでの小型・軽量化や、従来複数のパーツで構成していた部品の一体化などの工夫も欠かせない。電動車シフトでエンジン車向け部品などを手がけていた部品メーカーの危機が叫ばれているが、見方を変えれば、これまで培った塑性加工や接合といったモノづくり技術を生かせる場面も増えそうだ。


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日刊工業新聞 2024年05月24日

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