東海大・早大の姿勢が顕著、研究機器の共用で発揮する私立大ならでは力
理工系の研究機器は国立の研究大学が先進だが、大型機器の効率的な共同・遠隔利用となると意外にも私立の大規模大学の実績が高い。学生数が多く競争的資金が不十分という弱みを、測定装置の共用で強みに転換する姿勢が、東海大学や早稲田大学で顕著だ。研究データ管理という新たな時代ニーズもあり、私立大ならではの力の発揮が注目される。(編集委員・山本佳世子)
機器の共同・遠隔利用は、ある研究者が遠隔のキャンパスにある走査型電子鏡などを、リモートシステムで操作して試料測定するイメージだ。機器を動かしつつ遠隔で不具合をみるメンテナンスもある。研究者や学生、利用を支援する学内技術職員、機器メーカーのエンジニアらでやりとりする。
研究機器は国立大の場合は、獲得した大型の競争的資金で購入し、各研究室に設置することが多い。プロジェクト終了後は管理予算もなくなるが、稼働率は低いまま放置されがちだ。そのため機器の購入・更新・廃棄を全学で考えることが、国立大の研究戦略として重要になりつつある。
一方、私立大は理工系を多く持つ場合でも研究より教育に軸足があり、学生実験や卒業研究のために機器を購入する。大学の予算を使うため、多くの学生や研究室で使う体制整備は当然のことだ。技術職員が少なく、大規模大ならキャンパスが点在するのも特徴だ。
東海大の熊本キャンパス(熊本市東区)の研究者と、日立ハイテクの九州拠点のエンジニアの間で、遠隔保守の共同研究を始めたのは90年代のこと。全学施設に学内機器を集約する動きも、国立大は近年だが、同大は2000年頃から進めた。
23年からは同社グループと、測定データのクラウド管理まで含めた実証研究をスタートした。「将来は島津製作所や日本電子など他メーカーの機器も、併せて管理できるようにしたい」と岩森暁学長室部長(研究推進担当)は意気込む。
機器共用は政府が推進するオープンサイエンス(OA)でも注目される。分析データを管理して学内外の研究者も見られるようし、研究の重複や研究不正を防ぐのが狙いだ。
早稲田大学の天野嘉春研究推進部長は「誰がいつ、どの研究予算で機器を使ったかという記録が、研究データマネジメントに生かせる。将来は価値あるデータを材料メーカーに販売できるかもしれない」と前向きだ。私立大が研究改革をリードするユニークさからも注視されそうだ。