競争率6倍弱の大激戦、「地域中核・特色ある研究大学」採択12件の中身
神戸大・広島大・東京芸大など
国際卓越研究大学に次ぐ研究大学を育てる文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業」(J―PEAKS)の初回、2023年度の採択12件が決まった。神戸大学と広島大学、慶応義塾大学と沖縄科学技術大学院大学(OIST)は相互に連携大学を務め、両案とも採択された。アートと科学技術の融合を掲げる東京芸術大学も入った。競争率6倍弱の大激戦、不採択大学は24年度の再挑戦も可能だ。しかし国際卓越研究大学制度からくら替え申請する大学も想定され、複雑さが増してきそうだ。(編集委員・山本佳世子)
八ケ岳のように研究大学群が競い合う呼称であるJ―PEAKSは、文部科学省の設計による研究システム改革事業で、日本学術振興会が基金で実施する。目的は研究の卓越性に加え、スタートアップなどイノベーション創出、地域課題解決だ。
5年間の支援で、1件当たりの最大経費は研究力向上の人材雇用(戦略企画や技術支援が中心、研究者も可)に25億円。研究機器やデジタル変革(DX)など設備の整備に30億円と破格だ。申請が69件に膨れる中、「(23、24年度で)計25件程度」の枠は結局、23年度に半分が使われて国立9、公立1、私立2となった。中堅私立総合大学の応募も多く、「研究システムの戦略的な改革を広く考える機会になった」(文科省の産業連携・地域振興課)と波及効果は高い。
ポイントの一つは大学間連携だ。バイオものづくりの神戸大、半導体・超物質の広島大は互いを補完・強化する理想の体制になる。慶大はOISTのバイオ・量子と連携したシミュレーションを開発。逆に日本と世界をつなぐOISTの日本側ネットワークを、慶大が支えるとみられる。
一方で持続的な食料生産システムの構築に取り組む北海道大学や世界の水問題に挑む信州大学の提案は、予算配分なしで参画する大学は多いが、密接に連携する大学はない。研究大学の“連峰”構築にふさわしい多様な戦略が後押しされることになる。
「採択が12件とは…」。申請・不採択となった大学幹部の一人は、後に続く言葉が出ない。23年度に加え、24年度の厳しさをうかがわせるからだ。
J―PEAKSの枠は残り13件程度と算出できる。しかし国際卓越に申請するも認定候補にならなかった9件のうち、それなりの数の大学が狙いをJ―PEAKSに変更すると見られている。枠はそれを踏まえて残されたはずだ。となるとJ―PEAKSで再挑戦する場合は、複数の国際卓越クラスの大学と激しく競うことになる。
プランの軽い手直しでは済まないだろう。研究力強化の2大事業は24年度も引き続き、多くの大学の関心ごととなりそうだ。