27空港で脱炭素、国交省が認定した推進計画の中身
空港のカーボンニュートラル(CN=温室効果ガス排出量実質ゼロ)実現に向けて、国土交通省は国が管理する羽田空港など全27空港の空港脱炭素化推進計画を作成した。このうち宮崎空港など8空港は2030年に、その他の19空港は50年のCNを目指すとした。すでに成田、中部、関西、大阪の4国際空港では23年12月に、県営名古屋空港は24年3月に空港脱炭素化推進計画の国交相認定を受け、さまざまな取り組みを進めている。(編集委員・板崎英士)
30年のCNを目指すのは宮崎、長崎、高知、熊本、大分、小松、徳島、八尾の8空港。いずれも空調設備の高効率化や空港内用地での太陽光発電導入などを進める。さらに50年時点では400トンから3500トンのカーボンクレジット創出を目指す。他の19空港は30年時点で二酸化炭素(CO2)排出を13年度比46―99・9%削減を目指し、50年度までにCNを実現する計画。羽田空港は建物の新築に当たってはすべてZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)とする。
国全体の方針である50年のCN実現に向け、航空の分野では航空機運航に関しては持続可能な航空燃料の導入、管制の高度化による運航の改善、機材・装備品などへの新たな環境技術の導入を3本柱に進めている。一方、空港の脱炭素化を進めるには、空港施設や空港車両からのCO2の排出削減、空港での再生可能エネルギーの導入促進、さらに地上航空機や空港アクセスでのCO2排出削減が重要だ。このために省エネや再生エネの高度な技術を持つ企業との取り組むスキームとして、21年9月に「空港脱炭素化に向けた官民連携プラットフォーム」が設立された。各空港はこうした枠組みを活用し、空港の規模や特性に合う最適な脱炭素化を模索してきた。
空港脱炭素化推進計画は、22年の航空法や空港法の改正に基づき、各空港の管理者と関係事業者が一体となって脱炭素化に向けた具体的な取り組みや数値目標を策定するもの。具体的な取り組みではインバーター制御ターボ冷凍機の導入による空調設備の高効率化、照明や航空灯火の発光ダイオード(LED)化、構内車両の電気自動車(EV)化、太陽光発電などの再生エネ設備の導入などが中心となる。
成田国際空港は東京ガスと空港に供給するエネルギーの脱炭素化を実現するための共同出資会社を設立し、23年4月に事業を開始した。27年度にコジェネレーション(熱電併給)設備を、34年度に新中央冷暖房所を完成させる。45年度までには空港内に18万キロワットの太陽光発電設備を設け空港で使用する電力の4割を賄う方針。総投資額は1000億円になる。成田空港の田村明比古社長は「脱炭素化を実現しないと、今後世界の航空会社から選ばれなくなる」という危機感を口にする。
空港の脱炭素化は、1日も機能を止めずに設備更新することが必要。また主要空港と地方空港では施設規模や処理能力は大きく異なる。同規模の空港での脱炭素に向けた取り組みや成果をオールジャパンでいかに横展開できるかが、早期のCN実現に向けたカギとなる。