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環境対応・技術革新で水素・ロボ利用加速、関西3空港が秘めている可能性

環境対応・技術革新で水素・ロボ利用加速、関西3空港が秘めている可能性

関西エアポートが空港のSDGs活動推進の一環で導入した業務用車両の水素ステーション(関西国際空港)

関西エアポート(大阪府泉佐野市、山谷佳之社長)は、関西・大阪・神戸の3空港で持続可能な開発目標(SDGs)実現に向けた活動を積極化している。水素やロボットの活用で環境負荷軽減や技術革新を図る。2025年の大阪・関西万博で実用化が見込まれる空飛ぶクルマでは、関西国際空港などを離着陸するルートが想定されるなど世界から注目される可能性がある。

万博の観客が飛行機で関西を訪ねる場合は空港が“ファーストパビリオン”になる。このため空港でSDGsの取り組みを示すことで、SDGsをテーマとする万博のPRにもなる。山谷社長は「50年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロとする目標を掲げ、水素の利活用など環境負荷を低減するさまざまな施策に取り組んでいる」と強調する。

関西空港と大阪空港には水素ステーションが整備され、燃料電池で動く業務用車両が導入されている。関西空港の貨物上屋の一部では燃料電池フォークリフトが22台走っている。二酸化炭素(CO2)や排ガス、においが出ず、空気はクリーンだ。音も静かで、労働環境改善にもつながっている。

「日本は水素の利活用を活発に取り組める環境が整っている」(ブノア・リュロ副社長)として、欧州のエアバス(トゥールーズ)と3空港で水素を動力とする航空機の運航に向けて協働する覚書を結んだ。航空機の水素利用に必要な政策提言と課題をまとめたロードマップを協働で作成し、インフラ整備を先導する考え。「空港、航空分野の脱炭素化に寄与するものでうれしく思う」(山谷社長)と期待する。

日揮ホールディングスなどとは、3空港の飲食店などの廃食用油を持続可能な航空燃料(SAF)に用いる計画がある。

警備業務の一部を担う自律走行型巡回監視ロボット

関西空港ではさまざまなロボットが活躍している。警備ロボット「セコムロボットX2」はカメラで画像監視を行いながら巡回する。巡回後は定位置で停止し、充電しながら周囲を監視する。清掃ロボットは清掃エリアの運転内容を記憶でき、ターミナルビル内を自動清掃する。

新型コロナウイルス感染症対策ではPCR検査ロボットシステムを21年に導入した。1日最大2500の検体を自動で検査する。検査受付から陰性証明書発行まで最短3時間で行い、安全な出入国を支える。神戸空港では遠隔対話ロボットでの接客や商品販促の実証実験を行っている。

空飛ぶクルマは海上にある関西空港や神戸空港を離発着地にしやすい。航空機と空域が重ならないように調整して安全性を確保する必要があるが、スピードと利便性を併せ持つ次世代の乗り物として期待されている。

関西エアポートは国内で初めて複数空港コンセッションで運営している。成果が出た活動をほかの空港にも展開することで効果を高めやすく、国内外の空港に広がる可能性を秘めている。

日刊工業新聞2022年9月7日

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