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原子力機構、金属の抽出法に新たな視点 溶媒の違いで構造体の特性変化

リサイクル技術進化期待

日本原子力研究開発機構は、有用な金属を選択的に抽出するリサイクル技術「溶媒抽出法」について、同法の進化につながる新しい視点を発見した。多様な金属を溶かした溶液から抽出剤を活用し抽出する方法で、使う溶媒の違いにより抽出剤が形成するナノスケールの構造体「超分子集合体」の特性が変わり、金属イオンの抽出に違いが生じることを見いだした。この特性を考慮した金属イオンの分離システムの設計など、溶媒抽出法の技術発展が期待される。

総合科学研究機構やフランス原子力・代替エネルギー庁などとの共同研究。

溶媒抽出法は、水と油のように混ざり合わない二つの液体の相の間で、どちらの液体相に溶けやすいかという物質の性質を利用した分離・精製方法。石油の精製や有用金属のリサイクルなどで利用されている。

これまで抽出分離される金属の種類や量は、抽出剤と金属イオンの相性のみで決まるとされていた。しかし今回、抽出剤にマロンアミドを用いてパラジウムとネオジムの2種類の金属を分離する際に、油相にトルエンを使うとパラジウムだけが抽出され、ヘプタンを使うとパラジウムとネオジムの両方が抽出された。トルエンの場合はパラジウムの抽出速度が極端に遅くなった。

そこで、超分子集合体に着目してX線と中性子線を利用して分析した結果、溶媒の違いによって超分子集合体の特性が変化し、金属イオンの抽出に影響していることが分かった。

日刊工業新聞 2024年04月17日

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原子力機構の『価値』
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