マンパワー頼りの廃棄物処理作業、竹中工務店などが刷新に挑む
AIで分別作業サポート
「建設現場で発生する産業廃棄物に関する新技術を各段階で開発し、廃棄物処理の効率を引き上げる」。竹中工務店生産本部生産企画部の出口明シニアチーフエキスパートは、主査として取り組む建設RXコンソーシアム作業所廃棄物対応技術分科会の役割をこう位置付ける。大量の産廃を排出する建設現場において、長年マンパワーに頼ってきた処理作業を刷新。同時にリデュース、リユース、リサイクル(3R)の推進も打ち出す。
分科会活動の軸にあるのは竹中工務店が進めてきた構想だ。まず産廃処理を分別・圧縮・回収の3段階に分類。そして人工知能(AI)を使って煩わしい分別作業を支援するアプリケーションのほか、容積を減らす新型の圧縮機、集積ヤードの状況を把握するセンサーを開発・導入する絵を描く。出口シニアチーフエキスパートは「各社の開発・保有技術を共有し、実証と改良を繰り返してきた」と手応えを示す。
AI分別アプリは産廃の写真約1200枚を登録した上で、木材や廃プラ、混合可燃といった分別項目とひも付けて学習させたものだ。作業員は産廃の写真を撮るだけで分別先を確認できるため、分別項目を掲示・徹底させたり、監視員を配置したりする従来の手間を省ける。AIアプリの正答率は、現状で85%以上と高い。不十分な分別が原因で、混合廃棄物として処理するコストを軽減する効果も出ているという。
新型圧縮機の開発も順調に進んでいる。産廃は「3割圧縮すると運搬費を3割削減できる」(竹中工務店)とされ、搬出車両の多さがそのままコストや二酸化炭素(CO2)の排出量につながっていた従来の課題を解消できる。新型機は産廃を集積する容器内で直接圧縮できるため作業員の負担が少なく、本来の業務に集中させる環境も整えられる。
集積ヤードに設置する産廃センサーもユニークだ。建設現場の産廃は決まった量やタイミングで排出されるのではなく、工事の進捗(しんちょく)に応じて発生・集積される。だが担当者は他業務も抱える中で「ヤードの状況を細かく把握するのは難しい」(竹中工務店)。結果として大量の産廃が集積されたり、処理業者の手配に時間を取られたりする例が目立っていた。
これに対し、ブラウザー上で集積量を把握できる産廃センサーは「事務補助のスタッフを含め、どこでも誰でも使える」(同)。将来は確認作業を処理業者に任せ、適切なタイミングで回収してもらう仕組みも模索する。いずれの技術も、先行して関西圏での実用化を検討。今後は、集積容器や分別項目が異なる他地域でも使えるシステムとして拡張することも視野に入れる。