ニュースイッチ

独自の樹脂複合化技術で「リチウムイオン電池」狙う。日光化成の強さ

独自の樹脂複合化技術で「リチウムイオン電池」狙う。日光化成の強さ

リチウムイオン電池の熱暴走を防止する膨張シート「ニコ膨張シート」

独自の樹脂複合化技術

日光化成(大阪市北区、利倉一彰社長)は、電気絶縁性や耐熱性、断熱性を強みとする樹脂素材を製造・販売する。エンドユーザーは自動車や医療、化学、半導体、建材など多岐にわたり、取引先は約1000社に及ぶ。同社のコア技術となっているのは多種多様な樹脂を独自の配合技術で混合させ、性能を持たせる複合化技術。創業77年目を迎える同社の蓄積してきたノウハウは、大手企業からも一目置かれる。

「1+1=2ではなく、3や4になる素材を開発している」。利倉社長は自社の強みをこう表現する。例えば電気絶縁材「カルライト」は、最大400度Cの耐熱性、絶縁性、耐久性を持つことに加え、比重は従来の積層板の約半分であり、軽量化や省エネルギー化に貢献している。新幹線の変圧器やパンタグラフなど車材部品素材に使用され、40年以上のロングセラー製品となっている。

半導体の検査装置向けや、エレベーターのモーターなど同社の樹脂材料は幅広い分野で活躍する。ただ専門性が高過ぎるゆえに、「当社の強みが理解されにくい」(利倉社長)のも事実。そこで利倉社長自ら経済団体などで技術を発信するとともに、複合化技術の可能性を広げるため、産学官の研究にも積極的に取り組む。

その一つがリチウムイオン電池(LiB)の熱暴走を防止する断熱材の開発だ。電気自動車(EV)などの需要増に伴い電池は大型化しているが、大型化するほど熱暴走のリスクも増す。「900-1000度Cの耐熱性が求められる」(利倉社長)EVでは、充放電の際に発生する熱の制御が安全性の向上にとって欠かせない。

同社は、放熱性と断熱性の相反する特性を有したシート状断熱材を開発。電池のセル間に搭載し、熱がこもらないための放熱性を持ちつつ、電池が熱暴走した際に膨張してセル間の類焼を防ぐ。「新たな製品の軸になれば」と利倉社長は期待を込める。絶縁性など従来の特性に加え、放熱性や二酸化炭素(CO2)削減といったニーズでも、同社の複合化材料の可能性が広がっている。(大阪・池知恵)

日刊工業新聞 2024年03月28日

編集部のおすすめ