上下水道の老朽化で事故相次ぐ、災害対策どうするか
4月から水道行政が厚生労働省から国土交通省に移管され、上下水道の一元管理が始まる。近年、老朽化による水道施設の事故は増えているが、人口減少などで水道収入が減り設備更新できないケースが増えている。国交省への一元化で災害対策のインフラ整備と合わせた効率的な整備が期待される。能登半島地震で被災した上下水道は一足早く一体での復旧を進めている。12日には厚労省と共同で「上下水道地震対策検討委員会」を発足、災害に強い上下水道のあり方の検討を開始した。
水道事業は原則として市町村が運営しているが財源不足は深刻だ。地震や台風での被害だけでなく、2016年には福岡県などで水道管が凍結し50万件以上が断水、21年には和歌山県で老朽化した水道橋が崩落し6万件が断水するなどの事態が起きている。
戦後、健康を守るために厚労省が水道(上水)事業を管轄、整備し普及率は98%を超えた。下水道は国交省がインフラの一環で整備し普及率は約80%。今後は老朽化した水道管などの耐震化や設備の更新が課題となる。このため国交省が一体で管理や整備を進める。
12日の地震対策検討委員会の初会合では、能登地方は管路(上水管)の耐震化率が全国平均より低く東日本大震災や熊本地震と比べ被害が大きいことや、下水道の耐震化率は平均より高く不具合があっても流す機能は確保されていたことなどが報告された。復旧への課題として委員から、優先順位の策定や上下水道連携したマッピングの有効性、基幹施設の冗長設計の必要性、原型でなく災害に強い復旧などが指摘された。被災した施設は現行の耐震基準で復旧するが、必要に応じて下水から浄化槽への転換なども検討する。また全国で上下水道の広域化や事業主体の統合がすすむ中、都道府県が中心にこうした方針を取りまとめ国が助言する考えが示された。
今回、上下一体で復旧活動を行った成果として「(厚労省と共同で)優先順位が決められた。上下両方使えないと水は流せず、一体的な強靱(きょうじん)化の必要性をあらためて認識した」(石井宏幸国交省水管理・国土保全局下水道事業課長)とする。今後、調査・検証を進め5月をめどに被災地に助言を行い、8月に最終取りまとめを行う。成果は全国の上下水道の強靱化や、民間委託などを含めた水道事業の広域化にも生かす方針だ。