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10年で出荷台数6分の1…デジカメ、販売単価向上へ提案する付加価値

10年で出荷台数6分の1…デジカメ、販売単価向上へ提案する付加価値

富士フイルムの「インスタックス パル」はスマホでは難しい画角での撮影を可能にする

障がい者に網膜投影 VR機能も

カメラ市場の縮小傾向が続く中、メーカー各社が製品の付加価値向上に力を注いでいる。スマートフォンでは撮影しにくい画角への対応や、視覚障がいがある人でも使いやすい仕組みの開発、仮想現実(VR)映像制作機能の展開など、取り組みは多彩だ。カメラ映像機器工業会(CIPA)によると、2024年のカメラの出荷台数は14年比約6分の1になる見通し。新たな顧客体験の提供などで販売単価を上げられるかが問われる。(阿部未沙子)

※自社作成

CIPAは24年のデジタルカメラ総出荷台数を前年比4%減の741万台と見込む。レンズ交換式カメラは同1・8%減の589万台と微減にとどまるものの、レンズ一体型カメラは同11・6%減の152万台と予測した。

カメラメーカー各社は需要喚起に向け、新たな顧客体験の創出や提案に取り組む。富士フイルムはインスタントカメラ「インスタックス(チェキ)」シリーズの新製品「インスタックス パル」を23年10月に発売した。製品の大きさは高さ約44ミリ×幅約42ミリ×奥行き約43ミリメートルで、重さは約41グラムと持ち運びがしやすい。広角レンズを搭載し、スマホでは難しい画角での撮影を可能とする。

インスタックス パルは計画比3割増の販売台数で推移しているといい、山元正人取締役専務執行役員は「『かわいい』という声を頂いている」と手応えを語る。

ソニーが展開するのは、QDレーザ(川崎市川崎区)と共同企画した「網膜投影カメラキット」だ。ソニーのレンズ一体型カメラ、サイバーショット「DSC―HX99」に網膜投影型ビューファインダーを装着することで、視覚に障がいがあるといった見えづらさを抱える人も写真撮影を楽しめる。

カメラが捉えた景色を網膜に直接投影する技術を取り入れた。QDレーザの宮内洋宜事業推進室長は「ユーザーに喜んでもらえている。ミラーレスカメラにも対応できるようにしたい」と意欲を示す。

キヤノンは映像制作での付加価値向上に挑む。VR映像の撮影ができる小型カメラの試作品を開発。レンズを二つ搭載し、片方のレンズを製品の背面に回転させることで360度の撮影ができる。発売時期や製品名は今後詰める。

同社は35ミリフルサイズセンサー搭載のミラーレスカメラに装着できるVR映像撮影用の交換レンズを展開中。今後はフルサイズセンサーより小さいAPS―Cサイズのセンサーを搭載したカメラにも対応し、幅広い顧客からのVR映像制作需要を取り込む。

CIPAによるとカメラの出荷台数が減少傾向にある一方で、デジタルカメラの23年の出荷額は前年比4・9%増の7143億円になった。メーカーの投入する付加価値の高い製品が支持され、販売単価を向上できたとも解釈できる。そうした流れを保ち、市場の活性化につなげられるかが試されそうだ。


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日刊工業新聞 2024年03月06日

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