USスチール買収で全技術共有、日鉄副社長が明らかにした考え
日本製鉄は2024年秋までをめどとする米USスチールの買収について、実現すれば日鉄が持つ技術をすべてUSスチールと共有する。日鉄の森高弘副社長が日刊工業新聞社の取材に、USスチールの事業運営に当初、技術系の役員・部長クラスら十数人を充てる考えを明らかにした。研究開発拠点については今後「産学連携体制などを見つつ、日本にこだわらず米国に置くことも選択肢」と述べ、総合的観点で両社の相乗効果を引き出す検討を進めていく。
日本製鉄が約2兆円を投じ、USスチールを100%子会社化すると発表して2カ月半。成功すれば、日鉄が目指すグローバル粗鋼生産能力1億トン、連結事業利益1兆円を実現する飛躍台になる。
森副社長はUSスチールとの技術共有について「100%子会社は日鉄本体の支店や工場などと同じ扱いだ。当社が50%以上出資する企業には相当の技術を出せるが、それでも出せないコア技術は存在する」と述べた。
日鉄が世界に自負するハイエンドの電動車(xEV)モーター用電磁鋼鈑の技術について「米国xEV界のゲームチェンジャーとなる。USスチールも顧客である現地自動車メーカーも強くなり、米産業競争力が高まるというのが(買収の)大きな流れの一つだ」(森副社長)と強調した。
また国情が違う企業に技術を100%供与する形になることを踏まえ、弊害はないかとの質問には「基本的にない。もし政治的な事柄などで(技術面で心配な)課題が生じれば、その時々で個別対応していく」(同)との考えを示した。
一方、今回の買収に米国内で経済安全保障の観点から難色を示す向きがあることには「米国の産業基盤は強まり、何らマイナスはない」(同)と力を込めた。
買収となれば当面、技術陣ら十数人を派遣する考え。「USスチールはきちんとしたマネジメント、ガバナンス(統治)ができており、現在の人材を活用したい。当社からは技術の移転やそのためプロセスに必要なことを指導する人材を出したい」(同)と語った。