半導体接続材料で世界トップシェア—世界初の銅ボンディングワイヤ量産化に成功
記者の目/ここに注目
□入社後の学位取得も推奨 技術系中心に幅広い採用活動
□やりたいことを実現できる 若い人の個性生かせる環境
電子機器を制御する半導体は、パソコンやスマートフォンだけでなく、自動車や家電製品など幅広い製品に使われている。日鉄マイクロメタルは、半導体素子と基板を接続して電気信号を伝える金属の細い線「ボンディングワイヤ」の生産で世界トップシェアの一角を占める。ワイヤの直径は15〜30マイクロメートルで髪の毛の約5分の1の細さだ。「世界中にある電子機器の約15%に当社のワイヤが使われている」と山田隆社長は説明する。
ボンディングワイヤの素材には高価な金が半世紀にわたり使われていた。ただ、半導体の需要が急拡大する中で、金に代わる素材の開発が急務になっていた。同社は2007年に銅芯にパラジウムを被覆したボンディングワイヤの量産化に世界で初めて成功した。山田社長は当時、取締役技術開発部長。「銅は低価格で金に代わる素材として期待されていたが、硬くて酸化しやすく実用化は難しいと言われていた。しかし、独自の材料やプロセス技術の開発に加えて、ナノレベルの制御技術により、困難と言われた量産化と品質の安定化の両立を成し遂げた」と振り返る。
研究開発でマーケットを変える
この量産化技術によりボンディングワイヤの素材は金から銅へ急激に置き換わり、現在では全ボンディングワイヤ市場で約5割のシェアを占めることになった銅ボンディングワイヤで同社がトップシェアの座に着いた。「研究開発でマーケットを変えていくことが、当社の基本的な戦略。技術を非常に重視している」と山田社長は強調する。
2022年10月には、同社の技術が世界的に著名な雑誌「ニューズウイーク」に紹介された。半導体製造の材料や装置で優れた日本企業を取り上げた特集の中で、山田社長がインタビューを受けて同社の製品や技術が詳しく説明された。「マーケットに対して、常に一番早く新しい機能やコンセプトを提案する。それによって、知財と技術開発の両面において先頭を走ることができる。それが同業他社には真似できない当社の強み」と山田社長は話す。
同社は1987年に新日本製鐵(現日本製鉄)と松田産業の合弁により設立された。研究開発は日本製鉄の先端技術研究所と連携して進めているほか、人的交流も進めている。日本製鉄グループの総合力を活かし、常にお客様から選ばれる半導体実装技術のソリューションプロバイダーを目指す。世界市場をリードする
同社は埼玉県入間市に本社と入間工場を構えるほか、同県寄居町に寄居製造所がある。寄居製造所では小さな球状の材料で半導体と基板を接続する「マイクロボール」も生産する。一方、海外にはフィリピンと中国の浙江省杭州市に工場を持つ。マレーシアには営業拠点もある。
現在、社員は約300人。技術系を中心に幅広い採用活動を進めている。「当社は設備の開発から手がけており、金属や化学分野だけでなく機械の専門家も求めている」と山田社長は話す。同社は入社後の学位取得も積極的に推奨している。技術の最先端を先取りしてマーケットを拡大していくために、大学へ社員を送り出し専門知識や技術を学ぶ機会を提供するなど、社員の教育に熱心に取り組んでいる。山田社長は「当社は自分がやりたいと思うことが、かなり実現できる幅がある会社だ。情熱を持って臨んでもらえれば、実現できるだけの環境があり支援も受けられる。若い人の個性や能力を活かせる会社だ」と強調する。
今後、電気自動車(EV)の電気制御や高出力のエネルギーをコントロールするパワー半導体など、半導体需要はさらに幅広い用途へ拡大していくと予想されている。「将来は海外拠点を一層拡充してこれまで以上にワールドワイドで情報発信できる企業に成長していきたい」と山田社長は意気込みを見せる。
理系出身の若手社員に聞く
仕事にやりがいと喜び スピード感ある会社
会社説明会で在籍していた大学のOBから、パラジウム被覆銅ボンディングワイヤの量産化に世界で初めて成功した企業と聞いて、ワクワクしたことを覚えています。自分も開発の仕事に携わりたいと思い、入社しました。現在は開発業務の中で評価を担当しています。開発中の製品の性能がどんどん向上していくのを、最初に確かめられるので、やりがいを感じています。当社は、開発・製造・販売と一貫した体制があり、関係者間での連携が密なため、スピード感のある製品開発が実現できています。
会社DATA
所在地 埼玉県入間市狭山ケ原158-1
設立 1987年2月
代表者 代表取締役社長 山田 隆
資本金 2億5000万円
従業員数 約300人
事業内容 ボンディングワイヤ、およびマイクロボールの製造、販売
URL https://www.nmc-net.co.jp/recruits/