JFE・神戸製鋼…高炉2社が事業増益、適正利ざや・コスト低減
高炉鉄鋼3社の2024年3月期連結業績見通しが出そろい、鋼材の販売数量や海外市況が振るわない状況を、適正マージン(利ざや)の確保とコスト低減で打開する動きが定着している。在庫評価影響など一過性要因を除く「実力事業利益」で、日本製鉄が23年11月予想比500億円増の8900億円、JFEホールディングス(HD)が同50億円増の2950億円と上方修正した。神戸製鋼所も経常利益予想を積み増した。3社では伸び幅には差があるが、実質的な収益力を高めて25年3月期の好スタートにつなげる構えだ。
鋼材需要は国内で自動車向けが堅調なものの、産業機械や建設向けは低調のまま。海外は影響力の大きい中国で経済回復が遅れる一方、輸出された中国材がアジアの市況価格を引き下げており、動向が注視されている。
こうした中で神戸製鋼所は24年3月期連結の経常利益予想を23年11月予想比50億円増の1500億円(前期比40・4%増)に上方修正した。燃料費調整の時期ずれや売電価格の一過性増益影響など電力事業に負うところが大きいが、鉄鋼が安定収益のベースとなる。
河原一明執行役員は販売価格に関連し「下期は鉄鋼スプレッド(原料と鋼材の値差)が縮小するが、年度ベースで適正水準を維持できる見通し」とした。
日本製鉄(国際会計基準)は事業利益を23年11月予想比600億円多い8000億円(同12・7%減)に上方修正した。在庫評価影響などを除く実力ベースでも前回予想比500億円多い8900億円に修正し、過去最高益を1560億円更新する見通しだ。
森高弘副社長は「厳しい環境下でも(23年4―12月期は)大変良い決算。長期ビジョンで目指す事業利益1兆円の実現に邁進していく」とコメントした。
JFEHD(国際会計基準)は24年3月期の事業利益で2900億円という予想を据え置いたが、前期比では23・0%増える。実力ベースの鉄鋼事業のセグメント利益は前期比約2・8倍の2050億円。内需低迷に加え、京浜地区(川崎市川崎区)の高炉休止もあり単独粗鋼生産量は前期よりも低下するが「高炉休止での固定費削減効果が表れる」と寺畑雅史副社長は語った。