地盤対策、海洋改善に効果

ＪＦＥスチールは洋上風力発電の地盤対応と海洋環境改善策をセットにし、洗堀（せんくつ）防止工向けに製鉄副産物である鉄鋼スラグ製の人工石材を提案する。着床式風車タワーを支えるモノパイルの洗堀防止工は一般に砕石が使われるが、スラグ人工石なら品質が安定する上に海藻など生物の付着性に優れる。２０２８年度からの運転を見込む国内洋上風力案件での受注を狙い、北海道から新潟県までの洗堀防止材需要の５割獲得を目指す。

ＪＦＥグループは陸上風力での実績を踏まえ、着床式洋上設備の運転・保守受託、素材供給などを総合的に計画。スラグ製人工石「フロンティアロック」の供給はその一環だ。

フロンティアロックは製鋼スラグとその前工程での高炉スラグ微粉末、水などを練り混ぜ、水和固化させたものを破砕してつくる。素材がリサイクル資材であるため天然骨材の採取による環境負荷を抑制するだけでなく、天然石とほぼ同等の性能も持つ。

水際構造物向けの洗堀防止工は水の流れや波で土砂が削り流されないようにするもので、海外の浮体式洋上風力向けでは砕石の使用が一般的だ。その点、フロンティアロックは鉄分を大量に含むため準硬石相当の品質に加え、「藻場の再生や人工漁礁効果を視野に、洋上風力事業者に使用を提案していく」（ＪＦＥスチール）という強みがある。

鉄鋼スラグ製の人工石材は従来、海岸の消波ブロックなどに使われてきた。洋上風力の現場では環境にやさしいエネルギー創出の基盤としてだけでなく、海洋環境の改善というダブルの環境対応で貢献を図る。

洋上風力発電向けでは、ＪＦＥスチールがモノパイル用大単重厚板などを生産、ＪＦＥエンジニアリングが４月に笠岡モノパイル製作所（岡山県笠岡市）を稼働予定で早期に年産能力１０万トンのフル稼働を目指している。各社を束ねるＪＦＥグループは、２８日に都内で開幕する「国際風力発電展」で総合対応力をアピールする。