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消費電力30%以上削減…「超電導でアルミ加熱」実用化へ

テラルがメド
消費電力30%以上削減…「超電導でアルミ加熱」実用化へ

テラルが開発した、超電導技術活用のアルミビレット加熱装置の試作機。実工場で使える機械を来年に開発する

テラル(広島県福山市、菅田博文社長)は、超電導技術を使ったアルミニウムビレット加熱装置の実用化にめどを付けた。アルミの建材などを押し出し加工する際の加熱向けで、主流の高周波誘導加熱に比べ消費電力を30%以上削減できる。試作機の結果が良好なことから、実工場向け機械を2025年初頭に開発。試験を経て25年半ば以降に発売する。

開発した試作機は超電導コイルにイットリウム系材料を使用し、液体窒素の温度(マイナス196度C)以上の高温超電導を実現する。超電導コイルで作った強力な磁場の中でビレットをモーターで回転させ、電磁誘導の原理で渦電流を生じさせ加熱する。開始45秒後に内部を450度C以上まで加熱できる。

試作機の回転用モーターは出力400キロワットのところ、今後作る実用機では同750キロワットと大型のモーターを使用。ビレットのサイズは直径152ミリ×長さ600ミリメートルから、直径178ミリ×長さ700ミリメートルまで大型化できる。1時間当たり40本の加熱能力を目指す。

ビレットの加熱で通常使われる高周波誘導加熱装置ではコイルの銅損が大きいためエネルギー効率が50%と低い上、誘導電流がビレットの表面に集まってしまい内部まで加熱するには大きなエネルギーが必要。一方、超電導コイルは銅損がなく75%前後の効率で、省エネルギー化が見込める。

超電導デバイスは医療用の磁気共鳴断層撮影(MRI)装置や、シリコン単結晶引き上げ装置などですでに産業応用されている。アルミビレットの加熱用途で搭載した機械はドイツや韓国で発売されたが普及していない。

日刊工業新聞 2024年02月21日

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