EV軽量化へ住友化学が提案活発化、熱・衝撃に強い液晶ポリマーの実力
住友化学はガラス繊維(GF)や炭素繊維(CF)の長繊維で強化した液晶ポリマー(LCP)で自動車需要の開拓を加速する。LCP長繊維強化ペレットの開発に取り組む。GF長繊維を複合したLCPは耐熱性や流動性を保ちつつ、高い衝撃吸収性能を持つ点が特徴だ。CF長繊維LCPの開発品は高い剛性が強み。主に電気自動車(EV)での金属代替需要を見据え、素材各社の提案も活発化している。(山岸渉)
「自動車業界は変革期であり、新しい材料として提案していきたい」。住友化学エネルギー・機能材料研究所の青嶋紘主任研究員はこう強調する。
LCP長繊維強化コンパウンドの中で、GF長繊維を複合したLCPは耐熱性や流動性に加え、耐衝撃性も高めている。また難燃性も向上させており、厚さ2ミリメートルの平板に10分間、1100度Cで接炎した試験でも貫通穴ができなかったという。金属代替として、アルミニウム合金と比べ軽量化できる優位性もある。こうした特徴を踏まえ、EV部品のクラッシュボックスやサイドプロテクター向けに提案を強める。
一方、CF長繊維を複合したLCP開発品の特徴は高い剛性だ。マグネシウム合金と同等の剛性を持ちつつ、鉄より35%軽量化、アルミ合金と比べて25%の軽量化を実現できるという。想定するのはサスペンション部品向けだ。今後は、コスト面との兼ね合いなどを検討しながら開発を進める考えだ。
GFやCFを活用したLCPには、同社が培ってきたLCPやコンパウンド技術などが生かされている。バッテリーカバーやトレーを含めた需要も想定している。
EVでは長距離の航続につながることもあり、軽量化の重要性がより増している。ただ、安全面から耐久性や耐熱性は欠かせない。実際、金属代替需要を狙う素材各社の動きも出てきている。
三井化学や出光興産が出資するプライムポリマー(東京都中央区)は、ガラス中繊維強化ポリプロピレン(中繊維GFPP)を開発した。長繊維GFPPに匹敵する機械物性を実現し、コスト面と強度面を両立させたのが特徴だ。軽量化や環境負荷低減に向け、金属などの代替を狙う。
EVシフトの加速は、新たな素材開発の動きにさらに弾みを付けそうだ。
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