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「正直、痛手」…豊田織機の認証不正の影響広がる、取引先から漏れる声

「正直、痛手」…豊田織機の認証不正の影響広がる、取引先から漏れる声

生産ライン停止を余儀なくされたトヨタ車体の富士松工場

成長軌道にブレーキ

トヨタ自動車を主要顧客とする自動車部品メーカーの間で、豊田自動織機のエンジン認証不正の影響がじわりと広がってきた。不正を受けてトヨタは生産子会社のトヨタ車体の工場を1月29日から停止している。これにより部品メーカー各社は生産・供給量を抑える必要が出てきた。半導体不足の影響が緩和し、トヨタの生産は好調で部品メーカーの生産量も高水準を維持していたが、ここに来て予期せぬブレーキがかかる。(名古屋・川口拓洋)

ダイハツ工業の不正よりも事業への影響は大きい」と語るのは、ある1次取引先の経営幹部。同社の場合、ダイハツとの取引比率は売上高ベースで数%程度にとどまるが、今回は主要顧客であるトヨタの稼働が落ちており「足元では約10%減の影響を見込んでいる」と肩を落とす。

背景にあるのは豊田自動織機の自動車向けディーゼルエンジンの不正による、トヨタ車体の生産停止。富士松工場(愛知県刈谷市)といなべ工場(三重県いなべ市)で1ラインずつ、吉原工場(愛知県豊田市)と岐阜車体工業の本社工場(岐阜県各務原市)でそれぞれ2ラインの停止を余儀なくされた。

不正が発覚したエンジンを搭載するのは人気のスポーツ多目的車(SUV)「ランドクルーザー」や商用バン「ハイエース」。だが、トヨタ車体のラインは混流生産となっており、高級ミニバン「アルファード」などの生産も併せて停止。部品メーカー各社は、この影響が小さくないとみる。

金属加工メーカーの経営幹部は「生産が下がれば、それだけ収益も下がる。長引いてほしくない」と本音を吐露する。別の材料加工メーカーでは、この期間を有効活用するため社内の加工現場や製品の点検に乗り出しているが、同社首脳も「正直、経営には痛手の部分もある」と語る。

トヨタにとっても影響は見通しにくい状況にある。現状、国土交通省による検査が続いており、国の判断を待っている。豊田自動織機の不正は出力試験で燃料噴射量の数値のバラつきを抑えたことだ。これを国交省がどう判断するかがカギとなる。

自動車産業は裾野が広い。サプライチェーン(供給網)の構成要素が一つ欠けると、自動車メーカーや部品メーカーなど全体に影響が広がり、それぞれの生産に支障が出てくる。不正はあってはならないことだが、各社ともに早期の改善を待っている。

日刊工業新聞 2024年02月09日

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