豊田自動織機はフォークリフト用エンジンの排ガス認証試験で不正があった問題で、不正対象が拡大したと発表した。新たにトヨタ自動車などに向けたエンジンの出力試験でも法規違反が明らかになった。トヨタでは29日、該当エンジンを搭載する車両の出荷を停止することを決めた。グローバルで１０車種、国内６車種に上るという。日野自動車も対象エンジンを積むトラックの出荷を停止する。

29日、都内で会見した伊藤浩一社長は「確実な再発防止策に向け立ち止まり、見つめ直し、基本の再徹底を進める」と陳謝した。新たに明らかになったトヨタ向け自動車エンジンの不正では人気スポーツ多目的車（ＳＵＶ）「ランドクルーザー」や商用バンの「ハイエース」などに搭載するディーゼルエンジン３種で違反した。出力試験で燃料噴射量を調整し、出力の見栄えが良くなるようにデータを調整した。これらのエンジンにおける２０２２年度の販売台数は８万４０００台。

自動車向けエンジンでも不正が明らかになったことについて、同日取材に応じたトヨタの佐藤恒治社長は「段階的な技術移転はしてきたが、うまく機能していなかった。現場同士の草の根のコミュニケーションと価値観の共有をしていく」と語った。伊藤社長も「データの取り扱いなど試験方法でトヨタとのコミュニケーションが足らなかった」と述べた。

産業車両用エンジンでは２３年３月にフォークリフト用エンジン３機種、建設機械用エンジン１機種の法令違反が判明していた。新たにフォークリフト用エンジン６機種、建機向け１機種でも劣化耐久試験で実測値を使わないほか、試験中に部品を交換するといった不正があった。

今回の法規違反により、豊田自動織機が手がけるエンジン世界生産の約３割が止まることになる。業績への影響については精査中とした。伊藤社長は「膿を出し切り、正しいことを正しくやれる組織になる」とした。